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知らぬ想い

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ずっと好きだった奴の隣に、いつの間にかいたその子を大切にしているのを知っていて、俺はどうすることもできないまま、一歩も進めないでお前の背中を見てばかりだ。


今日はシーランドと遊ぶ約束をしていたので、珍しく会議場に来ていた。

待ち合わせの場所をいちいち決めるのが面倒だったので、スェーデンに付いてきているシーランドと会議場入り口で落ち合うことになっていた。

シーランドを待つのに入り口に立っていると、スペインとロマーノがこちらへ向かってくるのが見えた。

スペインは幸せそうな顔で笑っていて、ロマーノも嫌がるそぶりを見せながらも、まんざらでもなさそうで、そんな二人をみていると胸がギシリと音をたてた。

まだ俺は・・・と思いながら、とてもこのまま二人と鉢合わせてもいい顔ができそうにないので、二人がこちらに気付く前に物影で息をひそめた。

自分の格好を滑稽に思いながらも、その場から動かないで居ると、バッドタイミングでシーランドが約束の場所に現れた。

「プロイセンのやつまだ来てないですよー。」

あぁ、俺は人を待たせるのが嫌いなのに、今出て行けば確実に二人にも顔を見せることになってしまう。

心の中でシーランドに謝りながら、スペインとロマーノが一刻も早く通り過ぎるのを待っていた。

「あれ?イギリスんとこの・・・。」

「シーランドですよ!」

絡むな馬鹿野郎!

「せやったなぁ。シーくんは何しよんの?また会議に乗り込もうとしとんの?」

「今日は違うですよー。」

小さい子大好きのペド野郎は、にこにこデレデレしながらシーランドに話しかける。

俺も小さかったらなぁ・・・なんてことを柄にもなく考える。

「何の用事か聞いてもええ?」

「いいですよ!今日はプロイセンと約束があるですよ!」

「えっ?」

スペインは目を見開いて固まる。

その様子を不振に思いながらも観察を続けていると、溜息を吐いたロマーノがスペインの肩を掴んで揺らした。

「おい、会議。」

はっと我にかえったスペインは、シーランドに別れを告げ、そそくさと会議場へと消えていった。

その場に残ったのはロマーノとシーランドだけ。

ロマーノは深く溜息を吐くと、ゆっくりと会議場へと歩き出す。

会議場に完全に入ったのを見届けてから、俺はシーランドに気付かれないように近付いた。

「待たせて悪かったな。」

「遅いですよー。」

シーランドに差し出された手をそっと握りながら俺は会議場に背を向けた。
作品名:知らぬ想い 作家名:谷尋悠