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二人

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何だかむしょうにシズちゃんに会いたくなって、池袋に来たものの、結局会えないまま新宿に帰り、今もう今日という日が終わろうとしていた。

そんな時、常識的に考えると人が訪ねてくるはずなどない時間だというのに、インターホンが鳴った。

「誰かと会う約束とかしてたっけ?」

疑問に思いながらも、インターホンに出る。

『開けろ。』

「・・・・・・。」

『臨也?』

幻聴かな?と一瞬わが耳を疑ったが、どうやらこの鼓膜を振るわせる声は間違いなく、平和島静雄のものだった。

「シズちゃん?」

確信を持っているにも関わらず、口からは少し震えた声で疑問系の言葉が飛び出していた。

『他に誰がいるんだ?早く開けねえとぶっ壊すぞ。』

「ちょっと待ってよ。」

物騒なことを言う静雄に少し焦って臨也はストップをかける。

「どうしてこんな時間にシズちゃんが来るの?」

『・・・・・・。』

「・・・・・・シズちゃん、教えて。」

しばらく沈黙が流れ、答えないのなら帰ってくれと言って切ろうかと思案し始めた時、ぽつりと静雄が何かを呟いた。

それをよく聞いていなかった臨也はもう一度言うように頼んだ。

『だから、手前に会いに来たって言ってんだろ。』

「シズちゃんが、俺に?珍しいね。」

『いいだろ別に、理由言ったんだから開けろ。』

臨也はここまで言うのだから仕方がないと思い、静雄を家にあげることにした。

部屋にあがった静雄にソファへ座るように言うと、素直にソファへと腰掛けた。

「俺に会いに来たって、どうかしたの?」

台所で珈琲を淹れながら尋ねると、ただ会いたかったと返され、何となく照れくさい気分にさせられた。

「はい、珈琲だよ。」

カップを目の前に差し出すと、それを大人しく受け取り口をつけた。

てっきり毒が入っているんじゃないかといわれると思っていたので、臨也は拍子抜けしながら自分も腰を落ち着けた。

「何だかシズちゃんとこうしてると変な感じがするよ。」

いつもは標識を引き抜いたり、ナイフを投げるような関係だから、こうして静かに向かい合っているのには違和感があった。

「家に帰って、さっさと寝るつもりだった・・・けど、手前の顔がむしょうに見たくなって・・・気付いたら来てたんだよ。」

普段は臨也が池袋にいただけで、池袋でないところでも顔を合わせただけで大喧嘩になるというのに、どういった心境の変化だと臨也は目を細めながら観察した。

けれど、大人しいという以外には別に何も変化したようには見えなかった。

それに、今ここで臨也が静雄を怒らせればいつもどおりの展開になるとも思えた。

だからこそ、臨也は何も言わなかった。

「手前、今日池袋に来てただろ。」

「気付いてたの?」

気付いていたのならどうして自分の目の前に現われなかったのだろうか、と思いながら静雄を見るが、静雄は何も言わなかった。

「会う前に帰るな。」

それしか言わなかった。

臨也はその言葉に思わず溜息をつきそうになったが、どうにかかみ殺し、かわりに言葉を紡ぐ。

「ねぇ、今日は泊まったら?終電ももう無いし。」

静雄は少し考えるそぶりを見せてから頷いた。

「分かった。」

「じゃぁ、シズちゃんベット使っていいからね。俺はソファーで寝るし。」

湯気がたっている珈琲を飲みながらそう言うと、何故か不思議そうな顔をされた。

「一緒に寝りゃいいじゃねーか。」

ブッ

思わず飲んでいた珈琲を勢いよく吐き出してしまった。

それほどの衝撃を持った言葉を静雄は発していた。

「ちょ、何考えてるのシズちゃん!思わず珈琲吐き出しちゃったよ。」

ティッシュを出してこぼした所を急いで拭く。

「何か変なこと言ったか?」

「いや、だからさ・・・どうして俺とシズちゃんが同じベットに寝るってことになるの。第一、シズちゃんは嫌じゃないわけ?」

ゴミ箱にティッシュを投げつけながらそういうと、静雄は飲み終えたカップをテーブルに置いてから口を開いた。

「嫌じゃないって言ったら、手前は俺と寝るのか?」

臨也は先ほどのように焦ったりせず、落ち着いて残っていた珈琲を飲みきり、静雄の使っていたカップと自分のカップを流しに置いた。

「寝るって・・・ただ一緒に朝まで寝るだけなら・・・いいよ。」

「あぁ、それでいいから。」

そう言った静雄の顔に切ないものが見えて、臨也は思わず静雄に抱きついていた。

「じゃぁ、朝まで一緒にね。」

「あぁ。」

そっと背にまわされる腕の感触に臨也は瞳を閉じた。

ベットに行こう、とは互いに切り出せないまま、長い間ずっとそうしていた。

求めていた温もりを確かに感じながら、ただ時間を忘れて抱き合っていた。

作品名:二人 作家名:谷尋悠