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クリアカラーのベビーブルー

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忍び足で近づく微かな足音に後ろを振り向くと、パジャマ姿のゴーシュがいた。
此方が声を出すよりも前に、ゴーシュが腫れた目で眠れないのかと囁くように問う。
うん、ちょっとね。
言葉を濁すと、ゴーシュは神妙な顔つきで僕のいるベランダに素足を踏み入れた。
遠く虫の声が聞こえる。
僕らは腫れて重たくなった瞼を無理矢理開いて、ちらほら見えるまだ灯りの付いたホテルの窓の数々を、面白くも無いその風景を二人してただぼんやりと眺めていた。



クリアカラーのベビーブルー




そのまま、どのくらい時間が経ったのだろう。

「悔しい」

日に焼けた足を少しだけ動かして、ゴーシュがぽつりとそう言った。
ゴーシュはベランダの手すりに背を預けて、泣き腫らした目で星を仰ぐ。
その横顔に見える瞳にまた涙を湛えているのを見て、また自分の目にもじんわりと熱が集まる。
もう涙は出尽くしたと思ったのに、やっぱりまだ足りない。
まだまだ、負けた悔しさはこんなもんじゃない。
マモルのチームは強かった。でも、僕らだって、頑張って頑張って、師匠と一緒に強くなったのに。

「……悔しい」

ゴーシュの言葉を鸚鵡返しに呟いて、ぱたぱたと地に落ちる涙を追うように、僕はその場にしゃがみ込む。
息を押し殺し、妹から貰ったペンダントをきつく握りしめて、ゴーシュもはらはらと泣いていた。
世界一になる、と。
僕は師匠に誓って、ゴーシュは妹に誓った。他のみんなだって、それを固く誓ったんだ。
――それでも僕らはその誓いを破ってしまった。
誰も僕らを責めないけれど、よく戦ったと褒めて、慰めてくれるけれど。

「くやしいよ、ゴーシュ……」

楽しかった試合が終わったのも、負けてしまったのも、師匠がマモルのところへ帰ってしまうのも。
体中悔しさと悲しさで一杯で、ひび割れて砕け散ってしまいそう。

「ロココ、ロココ」

僕と同じようにしゃがみ込んだゴーシュは、泣きながら「ロココ」と僕の名前を一杯呼んだ。

「ゴーシュ」

涙で詰まる声で一度だけ、ようやく出せた名前。
ひたりと触れた彼の脚は風に吹かれて冷えていて、僕は余計に悲しくなった。
君がその脚で入れた得点を、僕の手は守り抜けなくてごめんなさい。

「ごめんなさい」

ゴーシュは首を振って脚に触れた僕の手に暖かい掌を重ねた。







空が白く染まるまで、僕ら二人は小さく縮こまって、此の夜だけだと溢れる涙をただただ流し続けていた。