目を逸らすな
けれど眠れない。
何度も浅い眠りについては目を覚ます。
そして必ず一人の少女の名前を呟く。
「沙樹…」
その言葉は少し前まで何度も何度も口にしていた。
好きで好きで、何があっても守りたい。
初めてそう思った相手だ。
けれど今はそう思う資格すらない。
名前を呼ぶ資格も、会いに行く資格も。
でも会いたくて声を聞きたくて言葉を交わしたい気持ちはあった。
傷付けてしまったことを謝りたかった。
けれどそれは彼女の手を完全に離すことと同義。
だからこそ、こうして夢に見て眠れなくなっていた。
そうして頭が疲労を訴え、意識を無くすように正臣は眠りにつく。
目を覚ますまでにさして時間はかからない。
そうして正臣は今日も眠れない夜を繰り返していく。