「アトムより」より。
「アトムより」より。
ノスは、俺の自慢のロボットだ。
彼は、仕事で付き合いのあったロボット製造会社の社長に頼んで作ってもらった特注の友達ロボット。
変な語尾も、すぐ名前を書きたがるくせも、全部俺が注文したプログラム。だって、そんなやつは他にいるわけがないから。
もちろん、そんな機能なんか付けなくたって、特注の彼は一人しか存在しない。はずだった。
ある日、街で彼を見かけた。
一瞬声をかけそうになったがすぐに、彼は家で俺がチーズを買って帰ってくるのを待っているのだと思い出した。
ノスが二人いるはずもない。他人の空似だろう。そのときはそう思った。
だが、その日から俺は、その場にいないはずの彼の姿を見かけるようになった。
それは日に日に増えていって、気付いたら日に10回は彼の姿を見るようになっていた。
俺は、あの社長に問いただしに行った。
すると、彼は悪びれもせずにこう言ったのだ。
「私の作品を私の自由にして何が悪いのだ」…と。
俺はうなだれて家に帰った。
家ではいつものとおり、ノスが俺の帰りを待っていた。
声も、口調も、仕草も、いつもどおりのノス。
でも、それに違和感を感じている自分に気づいてしまった。
ちょっとした声色が、動きが、いつものノスと違う感じがした。
きっと気のせいだ。そう思っても、一度感じた違和感は消えない。
俺のノスは、どこに行ってしまったんだ?
すぐに名前を書きたがるくせがあって、変な語尾で話して、1人しかいなかった俺のノスは。
いったい、どこへ…
「そんな夢を見たんだよ」
「…悪夢のすねー」
「悪夢のすよー」
「でも夢は夢のすよ。ノスは1人のす!」
「だよなー。だって量産されてるのって
作品名:「アトムより」より。 作家名:泡沫 煙