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Parlez-moi d'amour-愛の言葉を聞かせてよ-

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「ギール! ギルベルト!」
「んあ……?」

 誰かに名を呼ばれた気がしてギルベルトは目を覚ます。手元の時計はまだ五時だ。空は薄らと明るい程度で、小鳥の声もまだ小さい。
 名前を呼んだからには弟ではないだろう、それにしたって聞いた事のある声だったんだが、とギルベルトは眉をひそめ、声がした窓の方を見て目を見開いた。

「ふ、フランシス!?」
「Bonjour! おはようギルベルト!」
「ば、馬鹿お前、なんでそんなとこにいるんだよ!」
「ギルの部屋と高さが丁度同じだったからさ、登っちゃった」

 あはは、と笑うフランシスがいるのは庭に生えた樹の上だ。いいから降りろ! とギルベルトが声を上げれば、しーっ、とフランシスが唇に指を当てる。

「静かに。まだ早朝だよ」
「誰のせいだ誰のっ、ったく」
「ごめんごめん、でもできれば今朝一番にギルに会いたくてさ」
「今朝?」

 何かあったか? とギルベルトは首を傾げ、あ、そうだ。と今日の日付を思い出した。
 7月14日。今日はフランシスの誕生日になっている日だ。

「思い出してくれた?」
「思い出すも何も……お前な、だからってわざわざ家にまで来るか? 普通」
「だってさ、折角なら一番にお前に会いたかったんだよ。仕方ないでしょ?」
「……馬鹿だろ」

 そうかもね、と幸せそうに微笑まれてしまえばどうする事も出来ず、ギルベルトは小さく溜息を吐いてフランシスに下へ降りろ、と指示を出す。

「え、降りるの? いいけど……」
「……よし、危ないから退いてろよ!」
「えっ!? うわっ、ギル!!」

 フランシスが下に降りたのを見計らい、ギルベルトは二階の窓から飛び降りる。このくらい屁でもないのだが、心配したらしいフランシスに慌てて抱きとめられ、二人とも芝生の上に転がってしまう。

「うわっ、だから退いてろって言っただろ! お前のが筋力ねえんだから」
「ごめん、つい……」
「……ま、いいけどな。シス」
「ん?」
「Herzlichen Gluckwunsch zum Geburtstag!」

 不意打ちの言葉とキスにフランシスは目を見張り、けれどすぐそのキスに応えるようにギルベルトを抱き寄せる。早朝のため通行人がいないことだけが幸いと言えば幸いか。

「っ、は……ちゃんとしたプレゼントは後で持ってってやるから、今はコレで我慢しとけ」
「我慢だなんて……最っ高のプレゼントでしょ。ギル、Merci,Je t'aime. 愛してるよ、ギルベルト」
「俺も……愛してるぜ、フランシス」

 もう少しだけ、と言わんばかりにキスを交わし、いちゃいちゃし出した二人を、二人の会話で起こされてしまった弟と小鳥が呆れながら眺めていたとか、いないとか。