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こんなバッドエンドも悪くない

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 あるところに、とても仲の悪い二つの国がありました。
 彼らは海を挟んで隣り合っていたのですが、お互いのことを馬鹿だ阿呆だと言い合ってばかりいました。
 そして、喧嘩をしました。
 そして、殺し合いをしました。
 馬鹿だ阿呆だといっていた言い合いは、死ねという言葉の罵り合いになりました。
 お互いがお互いの、大切な人を奪っていきました。
 お互いがお互いに、相手の消滅を ― できれば自分の手で消えることを ― 心の底から願っていました。
 いつかきっと、どちらかがどちらかを喰らい尽くすのだろう、周囲の国々は思っていました。
 彼ら自身も、己が相手を葬り去るときを、ハッピーエンドを、とてもとても楽しみにしていました。
 そして、時は流れて――――




               +     +     +     +





 「よぉファンキーパンク紳士もどき、ご機嫌麗しゅう。額に鎮座されていらっしゃる眉毛ちゃんはお元気?」
 「うるせぇくたばれワイン野郎。今日こそてめぇのその髭を丸っとひっこ抜いてやろうか、ぁあ?」


 肩にかかるぐらいの金髪を耳にかけた男性が、内側からドアを開けながら目はからかうように、けれど楽しそうに笑っています。
 その真正面に細身の男性も、眉を寄せて不機嫌そうな顔をしながらも、口元を上げて楽しそうに笑っています。
 二言三言会話をした後細身の男性がため息を吐き、長髪の男性の招き入れに応じて家の中へ足を踏み入れます。
 そして二人がすれ違った時、


 「ばふっ」


 細身の男性が正面を向いたまま長い髪の男性の顔にばさりと何かをあてて、何事もなかったかのように廊下を歩いて行きました。
 長髪の男性は顔からずり落ちたそれを両手で受け止めて、少し目を見張って、それから鼻歌を歌いながら細身の男性が向かった方向とは別の方向に歩いて行きました。
 彼が持っているのは、溢れんばかりの、たくさんの青い薔薇の花束でした。
 とても、とても青い ―――まるで魔法で作ったとしか思えないほどの、綺麗な青色をした薔薇でした。







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