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髑髏は笑う

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幽谷君がピアスを開けた。
左の耳にひとつ、右の耳にふたつ。
バレるとやばい、って、バンダナで隠れるように上の方の位置に開けていた三つの穴。

「柳田君だけだよ、見せたの。……内緒ね」

金銀銅の髑髏が三つ、彼の耳で並んで笑っていた。
それをカッコイイと感じる前に、貫通しているその穴が痛そうだと思ってしまうぼくはやっぱり弱虫なんだろうか。
どうやって開けたの、と聞くと幽谷君はにやりと口元を吊り上げて、筆箱の中から安全ピンを取り出して此方に投げた。
流石に血はついてなかったけれど、自らの身体に針を刺す、想像したその痛みが恐ろしくて僕はすぐにそれを机の上に置いてしまった。

「あの、さ……それ、痛かった?」
「少しだけね。でも試合でクラッシュする方がよっぽど痛いよ」

そう言われても、やっぱりぼくはそれが怖い。
サッカーの痛みは耐えられても、身体に穴を開ける恐怖には耐えられそうにないと思う。
恐る恐るピアスを眺めて「大丈夫?」と聞けば「バレなければ大丈夫」とぼくの心配したのとは別の方向に返されて、少しだけぼくは眉を顰めた。

「……心配してくれるんだ?」
「当たり前だよ。見つかることもだけど、安全ピンなんかで開けて膿んだりなんか……」
「大丈夫だよ、ちゃんと消毒したし。ありがと……でも、柳田君がそんなに心配してくれるならもう一つくらい開けようかな」
「……」
「冗談。そんな怖い顔しないでよ」

ところで、さあ。
前置きを一言、スクールバックを膝の上に置いて、幽谷君はごそごそと中身を探り始める。
今度はなんだろう。ちらりとその中身を覗き込むと、教科書やお札がごちゃごちゃに突っ込まれている中から、端が少しばかりひしゃげた小さな箱を取り出した。
黒のリボンでラッピングされたそれをはい、と此方に渡される。

「……誕生日はまだ先だけど…?」
「ふふ、なんでもない日おめでとう」

幽谷君はなんだか妙に嬉しそうにさっきぼくが置いた安全ピンの隣にその小箱をコトリと置いて、開けてみて、と促す。
354日のお誕生日じゃない日のうちの一日、か。
リボンを取って包装紙を剥がして、箱を開いて出てきたものは

「……これ、」

幽谷君が今見せてくれたピアスと同じもの。
指紋一つ無い髑髏がぴかぴかと輝いている。

「ピアス開けるのはいつでもいいからさ、いつか開けたらお揃いで付けよう?」
「ぼく……ずっと開けないかもしれないよ」
「それならそれで、構わないさ」

幽谷君は安全ピンを手の内で弄びながら楽しそうに笑う。
それにつられて笑ってしまったぼくは、あれだけ感じていた恐怖感をすっかり忘れ、とりあえず近々ピアッサーを探さなければと思ってしまった。

作品名:髑髏は笑う 作家名:桐風千代子