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いちごのきもち

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「そういえばあなたがイチゴを部室に持ってきてくれたのも、今頃の時期でしたよね」
食後のデザートに、とスーパーの買い物カゴに古泉が突っ込んできたイチゴを、男2人向かい合ってもぐもぐ食ってる最中にやつはそんな思い出し話を始めた。
「…あれか。よく覚えてるよなそんなこと」
こっちとしてはそんなむずがゆい記憶は即座に完全抹消したいんだが、やつにとっては『思い出の記念日』ネタらしく、うっとりとした表情で語り始めた。なんだかなあ。
「あの時のあなたはホントに初々しかった…今思い出しても胸の奥が甘くときめきますよ」
…おいおい何だその乙女思考回路は。正直聞いてるこっちの耳はもう既にかゆくてかゆくてしょうがないんだが、まだ続ける気か。
露骨にうんざりした顔で聞いていたせいか、もっと語りたかったと言わんばかりの古泉はしぶしぶ話を止めてイチゴにたっぷり練乳をつける。お前、甘いの好きなのは分かるがそれはちょっとつけ過ぎじゃないのか。見てるこっちが胸焼けする。
「まあ、あの時みたいな初々しいあなたもいいですけど」
赤い表面が見えなくなるほどたっぷりと練乳をまぶしたイチゴを指で摘み上げ、
「こんな風に」
手の甲にまで垂れた練乳を、下から上へゆっくりと舐め上げ、
「おいしくいただけるのもいいですからね」
イチゴの表面に舌を絡ませて練乳だけを舐め取って見せた。
…その頭に手刀を入れた俺は絶対に悪くない、と思う。
作品名:いちごのきもち 作家名:えてこ