偶然の必然
同じ学年といえども、授業などの兼ね合いで放課後部活にて朝の挨拶をすること
も珍しくない
他の学年ともなると偶然出会うなんてことは奇跡に近いのだ
そのはずなのに
「でねー跡部がねー」
慈郎が珍しく起きて話している横には宍戸
同じクラスの二人は音楽室に移動中だ
「あぁ、そうだな」
と宍戸はやや投げやりに返事をしたりそわそわしている
慈郎ですら気がつくくらい
いつもならそんなことをされたら文句の一つでも言うが
この時間はしかたないのだ
だって
ふっと隣の雰囲気が和らいだ
目線を追うとその先には背の高い一つ下の後輩
気がついているのかいないのか分からないが足まで止めて
移動中の生徒で混雑したなか
頭ひとつ飛び抜けた長太郎を探すのは簡単かも知れない
でも人込みに紛れる高さの宍戸を探すのは難しいはずだ
なのに
「宍戸さん!」
宍戸が気がついてから5秒もたたずに長太郎はこちらを向く
まるで二人だけの合図があるかのように
このようにいつも決まった時間ならともかく
この二人はたまたますれ違うときも逃さない
長太郎が駆け寄るまであと少し
その間に慈郎は教室へ
チャイムギリギリになるまでは誰にも邪魔できない