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ワックスをぶちまけろ!

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「佐藤君、ちょっといいかしら?」
「さとーさんさとーさん! ちょっといい?」
「二人いっぺんに話すな」
 相馬が休憩に入ってもなお暇でキッチンで煙草を吸っていた俺のところに何やら困った様子の八千代と少しはしゃいだ様子の種島がやって来た。
 面倒な事を言ってこなきゃいいんだが。

「八千代、先に言ってみろ」
「あのね今フロアの掃除をしているんだけど中々ピカピカにならないの。どうすれば良いと思う?」
「そりゃ簡単だな。業者にまかせろ。よし次、種島」
 何かぶっ飛んだ事を言われるかと思ったら意外にまともだったな。
 まぁいい。ちゃっちゃと次だ。

「あのね、伊波ちゃんの髪型をイメチェンしようと思うんだけど何か良い案ある?」
「伊波の短さじゃ変えようがないだろ」
「それでも印象を変えたいと思う伊波ちゃんの乙女心だよ! さとーさんは好きな髪型ってある?」
「それはお前、もちろん……」
 そこまで言いかけてハッと踏み止まる。
 危ねえ。もう少しでバック長めの外ハネ、サイドは短めの内ハネ、って言っちまうところだった。
 それが誰なのかは思わんし言わん。決して目の前に鳥頭のあいつがいたからではない。

「もちろん……?」
「何でもねえよ。伊波の乙女心よりも小鳥遊の体の方が心配だからアドバイスするとだな、そんなもんは整髪料をつけて適当にいじっておけ。以上」

 まったく、二人揃ってくだらん事を言いやがって……俺がここで煙草を吸っている時点で大体の予想はつくがそんなに暇なのか今日は。

「あのー佐藤君? 業者はまだ許可が下りないって音尾さんが言ってるの……」
「さとーさん、どんなの使えばいいのー?」
 あー今日もここは平和だ。そう言えば足立のところはヤクザが来たり色々と大変らしいな。

「佐藤君?」
「さとーさん?」
 足立の奴、彼女が出来たからって最近バンドの練習にもあんまし乗らねえな。クソ、滅びろ。

「さとーくーん?」
「さとーさーん?」
「二人ともまだいたのか」

「だから、フロアの床をどうしたら綺麗になるか……」
「どんな整髪料使えばいいの……」

 足立に彼女がいて俺は何も出来ず生殺し世界一に振り回されて、その腹いせにちびっこをいぢめる日々……

「さとーくん!」
「さとーさん!」

 ……それも嫌いじゃねえんだ。

「分かったから少し落ち着け。ぴったりの解決策があるんだ」
「なにかしら?」
「なんなのさとーさん?」


「そんなもんはな……」





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