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口笛に反応する伊波(犬的な意味で)とトップブリーダー小鳥遊

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「おい小鳥遊、どうにかして伊波を引きずりだせ。お前の管轄だろ」
「そう言われましても……」
「ただでさえ今日はフロアスタッフが少ないと言うのに伊波がこうなったらどうしようもねえだろ」
「かたなし君ならきっと上手くやれるよ!」
「はぁ……じゃあ何とかしますのでお二人は戻っていてもらえますか」

 そう言って先輩と佐藤さんを持ち場へ帰すと俺は、どうしたものかと一計を案じた。

 どうして伊波さんが女子更衣室に立てこもってしまったのか。そこからもう一度考え直してみよう。
 確か……伊波さんと先輩が話しをしていてそこに俺が入ってきて、そして大体いつもの流れ通りどれだけ近づけるか実験をして……
 あぁ、それで結局は伊波さんが我慢できなくて俺を殴っちゃったんだよな。通りで頬が痛いわけだ。
 そこまでなら今までと一緒なのに、今日は何で立てこもっちゃったんだろう。

「伊波さん、聞こえますか?」
「な、なに小鳥遊君?」
「どうしてこんな事してるんですか? 話してくれないと分かりませんよ?」
「それはだって……」
「だって、何ですか? こうしている間にも他の人に迷惑がかかっているんですよ」
「分かってるけど! でも……」

 これじゃあ埒が明かないぞ。先輩や佐藤さんに言われたとは言え、伊波さんの担当とは言え、ここでこうしている間にもフロア二人が抜けて他の人に迷惑が掛かるっていうのに。
 今までの俺なら嫌いな年増の事なんだから放っておけばいい、で済んでいたのに。
 最近の俺は伊波さんの事になると放って置けなくなる……何故だ?

「そ、そうだ! 伊波さんは犬だからだ!」
「犬じゃないよ私!」
「いいや伊波さんは犬だ! 犬なら口笛を吹けば反応するはずだ!」

 本当に我ながら何を言っているのかわけが分からない。伊波さんの事でこんなにも取り乱してしまうなんて!
 やけくそになった俺は甲高い口笛音を二、三回、ピーピーと鳴らしてみた。


 ────ガチャ


 開いた!?
 伊波さんって本当に犬だったのか!?


「あ、あの! 言っておくけど犬だから出てきたわけじゃないから! 小鳥遊君が犬犬、何回も言うから恥ずかしくて出てきたんだから……」
「え、あ、いや……」
「あの……ごめんなさい。もうこんな事しないから……」
「いえ……こちらこそ犬とか言ってしまってすみません」

 伊波さんの言葉で冷静になった俺は心苦しくなってしまった。
 理解できない。こんなにも伊波さんの事で自分自身が苦しくなってしまうなんて、どうかしてしまったんだろうか?

「取り合えず、戻りましょうか」





「迷惑かけてごめんなさい種島さん」
「ううん、そんな事ないよ伊波ちゃん。これからも頑張ろうね!」


「よお小鳥遊、上手くやったじゃねえか。さすが伊波担当だな」
「そうよ小鳥遊君。まひるちゃんの事、これからもよろしくね」
「担当、ですから」

 休憩室を出てキッチンの方へ戻ってきた俺は佐藤さんと轟さんに声を掛けられた。
 そう、担当だから。それ以外に意味はないはずだ。そうだよな、うん、そうだ。
 俺はそうやって一抹の不思議な寂しさを無理やり押し込むように納得させた。

「それにしても小鳥遊、お前はトップブリーダーに成れるぞ」
「へ? トップブリーダー、ですか?」
「そうだ、伊波を犬と呼んだり挙句の果てには口笛で誘き出していたみたいだったからな。お前は伊波のいい飼い主だよ」
「もう佐藤君! ごめんね小鳥遊くん、全部ここまで聞こえていたの」

 という事はもしかしてあのやり取りも全て筒抜けだった……?

「おいどうした小鳥遊。顔が真っ赤だぞ」
「いえ、何でもありません……俺、テーブルのお冷回ってきます……」


 まずいどうしよう全て聞かれていたなんて。
 やましい事なんて何もないのに。
 なのにこんなにも顔が熱くなるなんて。
 やましい事なんて何もないのに。
 あのやりとりを皆に聞かれていただけでこんなにも伊波さんを意識してしまうなんて。



 テーブル回りを終えてからどんな顔で伊波さんを見ればいいんだ!