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I’ll still・・・「-」

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陽が溶けそうな空の色
都会の淀んだ空の色は心地がよかった。

少なくとも この綺麗すぎる壮大な空よりは。

「ちょっと…しくじったかなぁ…」

ゆっくりと伸ばした手に四方から悲鳴が聞こえた。

沈みかけの夕日よりも赤いその掌は
唯ここではない何処かを彷徨って

或いは誰かの手を探していたのかもしれない。

だがそれを彼に聞く術は

もう無かった。


パタリとすら聞こえない小さな音を立てて
その掌はゆっくりと沈んだ



同じ頃―淀んだ都会の空がビルの僅かな隙間を埋めていく。

眠らない街 池袋

ある人にとっては故郷であり
ある人にとっては忌み嫌う場所

そんな池袋を形のない号外が駆け巡る。

あの情報屋が死んだ と。


その颯爽と駆け巡る情報に

背中を押されたある者は驚き
画策したある者は安堵し
崇拝していたある者は嘆き

「あのノミ蟲が…また何か企みやがって…!」

「それがさ…どうやらそうでもないらしくて…その…」

白衣の闇医者のその言葉に、思わず耳を疑った。

ロクでもない仕事をしているのはお互い様だが、少なくともこの闇医者―岸谷新羅は 彼―平和島静雄に

一度たりとも嘘を吐いたことは無かった。

そして大型ヴィジョンは少しだけ離れた聞いた事もない田舎町で起こった事件を伝える。

通行人が刺され、搬送先の病院で死亡したと。


そしてその通行人の名前が

折原臨也 という人間だという事を


忌み嫌っていたその名前を聞いた筈の
ある者は唯々 名前を知らないその感情に
力任せに自動販売機を投げた。

「どうせ嘘だろうが……今度会ったら覚えておけよ臨也君よぉぉ…」

そう言った日から

2日経っても
4日経っても
2週間経っても

その名前を呼ぶことはなく
その姿に沸いた怒りをぶつける事もなく

繰り返していた自問自答は否応無しに答えを出す。

もう自分は臨也に会う事がないのだと。

周囲が一足早く理解したことをようやく理解した。

「あの野郎ッ…オレがブッ殺す前に勝手に誰かに殺されやがって」


それはあまりにも矛盾しすぎている言葉だった。

矛盾しているが故に素直すぎる怒りへと変換される。

苛々する。

大体最初に見たときから気に入らなかった。

アイツが気に入ったのは俺じゃなくて俺の力

利用しようとして近づきやがって
面倒毎に巻き込みやがって

だから絶対アイツだけはぶっ殺さなきゃ
気が済まなかったのに。


路地裏に少しだけしゃがみこむ。

別にアイツの事でじゃない。
仕事がほんの少しだけ長引いて疲れただけだ。

そう言い聞かせながら。


次第に自分の影すらも高いビルの影に飲み込まれてカタチを失う。

「なんで……あのバカ……」

なんで
どうして
いなくなった…?



オレは…オレはまだ…手前を…。




「バカってもしかして俺のコト?相変わらず酷いなぁシズちゃんは」

その声にゆっくりと後ろを振り返った。

「ていうかすっごい久しぶりに戻ってきたのに相変わらずだねぇ池袋(ここ)は」

「臨也……」

「どうしたのシズちゃん??おーい??」

まるでフリーズしたように自分の姿を見たまま動かなくなった静雄に、臨也は首を傾げた。

(ああ、そっか俺死んだって噂出てたんだっけ…全く)

正確には死んだのは何だか巻き込まれたのか最初からそこに必然で居たのかわからない男の方で、実際刺されたものの致命傷には至らず無事退院してきた―のだが。



まるで幽霊でも見たかのような池袋という街の反応に臨也といえど多少驚いていた。




いつものように路地裏にいつもの服装の彼を見つけ声を掛けたのだが…。

(さすがにシズちゃんのこの反応は予想してなかった…かも)

てっきりいつものように自販機が飛んでくるかと思ったのだが、街の彼らとはまた違った反応…というか反応らしい反応も見せずに呆然と立ち尽くしている

ふざけて目の前で手を振ってみても、サングラスを取ってみても木偶みたいに動かない。


「もしかして俺がホントに死んだとでも思ってたの??まさかそこまでバカじゃないよねぇ?シズちゃんは」

茶化しても反応はない。
(まさか寝てたりしないよね??)
思わず顔を覗き込んだ臨也は少しだけ目の前に驚いた。
「シズちゃん……もしかして泣いて…る…?」

その声にようやく反応した静雄は、置かれている現状を理解した。

そしてその次の行動で、やはり目の前に居る人間が紛れもなく折原臨也である事を確認する。

「嬉しいな〜シズちゃん大好き…ってやっぱり刺さんないかぁ。残念」

挨拶代わりに差し出された右手には初めて会った頃と変わらない鋭利な刃物。



そうだ。オレは…オレはまだ…。



「臨也ぁぁぁぁ!!今日こそブッ殺す!!おとなしく殺されろっ!」

ビルを伝っていた配水管がガコっという音を立てて外される。

「シズちゃんが死んでくれるなら殺されてもいいけど?」

嬉々とした声で振り回されたそれを避け、臨也は池袋の路地裏へと消えた。


オレはまだ…。
コイツの事ぶっ殺してないんだから

「臨也ぁぁぁ!!」

END