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【米英】面倒な恋人の宥め方

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俺の恋人は、非常に面倒くさい

「ばかぁ!」
ほらまた言われた。
全く、飽きやしないのかな?
毎度毎度同じ文句ばかり。
ボキャブラリーが少ないの?そんな筈無いよね?二枚舌外交で知られた君のことだもの。
でも、俺の前の彼はいつも平静さを失っていて、上手く言葉が出てこないみたいだ。
「お、お前どーせ…っ、俺のことなんて本当は好きでもないくせに…っ」
そう言って、ぼろぼろぼろぼろと、大きな瞳から大きな雫が零れていく。
涙に濡れた緑は綺麗だけど、取り澄ましてない表情が愛らしいけど…でも、モヤモヤする。
どうして俺の気持ちを信じてはくれないんだろう?
確かに、あまり「アイラブユー」とは言わないけれど、女の子にするように常日頃気遣ってあげたりしないけれど、でも分かるだろう?
もっと確かなこと、してるじゃないか。
予定のない週末にはわざわざこんな遠くまで来てるの、何のためだと思ってるんだい?
美味しくないご飯を出されるの分かってて、それでも手ぶらでやってくるのは、どうしてだと思う?
本当に分からないのかな?
それって、すっごく俺を信じてないってことだよね?
傷ついたって顔しないでよ、俺だって傷ついてるのに!

どうしてこうなっちゃうんだろう?
告白が通じた時は本当に嬉しくて嬉しくて、舞い上がったのに。
奇跡とまで思えた。
でもそれは、俺だけだったのかな?
彼は最初っから俺の気持ちなんて信じてなかった?
こうして足繁く通っていても、ベッドを共にしても、彼は…俺の気持ちを疑ってた?
そんなのって…

「どうして…」
「…?」
ぽつりと俺が零した呟きに、彼の瞳が見開かれる。
いつも言い争いをしては泣かれて、猜疑心の塊のような彼の心は、どんどん凝り固まるばかりで…
どうしていいか分からない。
だってこういうのは初めてだ。
今まで誰とも親しい関係になったことなんてない。
告白も、付き合うのも、抱くのも、彼が初めてで、唯一だ。
だから、どうやったら愛情を信じて貰えるのかなんて…到底分かるはずもないじゃないか。
「どうして君は…俺を信じてくれないんだよ…っ?」
そう告げた時…一瞬驚いて、彼はまた顔をくしゃりと崩して涙を零した。
それから小さな声で、答えを呟く。
「理由なんて、ない…」
それはきっと、本心なんだろうと思った。
何の根拠もなく彼は不安になって、信じないと思うことでそれ以上傷つかないように自衛して…
だけどやっぱりそれは、俺の気持ちを踏みにじっているってことじゃないか!
「…っ」
ふつふつと沸いてくる良くない感情に、抗う気も起きない。
だってそれは、まるっきり侮辱のようなものだ。
「馬鹿にするなっ!!」
気が付けば、叫んでいた。
びく、と跳ね上がった肩を掴んで、強引に顔を合わす。
突然の俺の行為に、彼は困惑しているようだった。
けれど構ってられない。
もう彼の心情なんて、考えてられないんだ!
腕を突っぱねて引き離そうとする彼の身体をぐっと引き寄せて、強引にキスをした。
驚き見開かれる瞳を間近に捉えながら、更に深く口付けると、たちまち腕の中の身体から力が抜ける。
もうお互いに慣れてしまった感覚。
玄関で、リビングで、ベッドの中で、こうして何度もキスをしてきたのに。
それが何の意味もないものだったなんて言わせない。

ゼロ距離から僅かに遠ざかると、彼の口から熱い吐息が零れた。
覗き見た緑色は、蕩けて潤んでいるけれど、放っておくときっとまたすぐに余計な考えを始めてしまうに決まってる。
そうはさせない…!

俺は彼の肩から手を離し、代わりに膝裏と背に手を回して小柄な身体を抱き上げた。
それからすぐに、移動を始める。
目的地…?
そんなの、決まってるだろ。

「お、おい…アメリカ…っ!?降ろせ…降ろせよ!」
おろおろとみっともないくらいに動揺しながら、彼は俺に命じた。
勿論、そんな言葉は無視をする。
「嫌だ…!こんな時に…っ」
ぎゅうっとしがみ付いて、彼はまた泣き出しそうな顔をする。
さっきのキスで、俺がどうするつもりなのか分かってしまったんだろう。
それぐらいの察しの良さで、俺の気持ちも分かってくれればいいのに!
「アメリカ…っ!ホントに…嫌なんだ…っ!!」
耳に聞こえる声は、既に涙声になってしまっている。
どうやら本当に、彼はそんな気分にはなれないらしい。
でも関係ないよ、そんなこと。
気分じゃないなら、そういう気分にさせればいい。
詰まらない口喧嘩ごときじゃ揺らがないように、俺の気持ちを叩き込んでやる。

階段を上がって、廊下の突き当たり…そこに、彼が日頃過ごしている私室がある。
その扉のトアノブに手を掛けて俺は一呼吸吐き出した。
そして、彼に一度視線を遣る。
「…イギリス」
腕の中の面倒くさい恋人は、まだ観念しきらないらしく、縮こまって震えている。
そんな素振りを見せられても、もう止めるつもりなんてないよ。
そうだね、これっていわゆる『キレた』って状態なのかもね。
「君はゴチャゴチャ何も考えず、俺に愛されていればいいんだよ」
言い放って、俺はその扉を開いた。

そうだよ、俺は面倒臭いことは嫌いなんだ。
君と違ってね!