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ひとときの二人の世界で

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「わざわざ外に連れ出さなくていいんじゃねぇの?」

グレーの曇り空から覗く陽の光りが、朝の路地裏をうっすらと照らす。
その陽を背に受けて、ロックオンの表情はよく分からなかったけれど、愛しげに髪に、額に、瞼に、頬にとキスを落とすのだから、きっと締まりの無い顔をしているのだろう。

「お陽さんの下の方が、ハレルヤの顔がよく見えるだろう?」

そう言って口唇に深くキス。
身を任せていたらいつまでも続くのは経験上知っていたから、ハレルヤは軽く握った拳をロックオンの腹にお見舞いした。
大袈裟なほどのリアクションで離れてゆく恋人に、呆れたような、愛しいような複雑な表情でハレルヤは笑みを零した。




日中はアレルヤが、夜はハレルヤが主導権を握っていたから、必然的に逢瀬は陽が翳った夜になる。
朝陽が昇って来た今、その主導権はハレルヤからアレルヤに渡される、そんな狭間。

ロックオンはハレルヤの手を引いて、路地裏から街のメインストリートに出た。
勿論、早朝の街には人っ子一人いない。

ロックオンは、繋いだ手をブンブンと大きく振りながら歩きはじめる。
ガキみたいだな、とハレルヤは苦笑いしたけれど、手は決して放さなかった。
二人だけが共有する秘密のように、指を絡ませて、顔を見合わせてはくすくすと小さく笑う。
まるで二人しかいない世界みたいだと、笑いながら。

「・・・仮にそうなったとしても、俺はハレルヤがいてくれたら、それでいい」

ロックオンは、真顔でそんなことを言ってくる。
それは嘘だ、と判っていても、心の中から溢れる熱を止められない。
ハレルヤは思わず顔を背けると、それを止めるように伸びた腕に捕らわれ、抱きすくめられた。

「どうした?ハレルヤ・・・」

殊更甘く鼓膜を響かせるその声が、腰に廻した腕が、ふわりと香る肌の匂いが、溢れ出しそうになる感情を煽らせる。

ハレルヤは網に出来た穴からすり抜ける魚のように、するりとロックオンの腕から逃れた。

「・・・ハレルヤ?」

名を呼ばれて、ロックオンに背を向けていたハレルヤが振り返ると、そこには困惑の表情を浮かべるアレルヤが立っていた。

「・・・ロックオン?・・・僕、どうしてこんな所に?」

逃げやがったな、アイツ・・・とロックオンは一瞬顔を顰めたけれど、すぐさま笑みを浮かべるとアレルヤの肩を抱いて歩き始めた。

「ミス・スメラギに朝の買出し頼まれたんだよ。・・・覚えてねぇのかぁ?」

もっとマシな言い訳考えろよな、とアレルヤの中で悪態を吐いたハレルヤは、耳まで赤くなった自分の顔を見られないで済んだことに、胸を撫で下ろした。