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炎を冷やして、氷を燃やして、

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それはまるで夏の眩しい白昼夢のようで、

暑い季節はとにかく嫌いだった。晴れの日は焦げるようだし、雨の日はとにかく蒸すのだ。
そんな日は逃げる場所なんて何処にもなく、だったら部屋でじっとしていたほうが幾分かマシだった。
だけど屋内は日差しを遮れるものの涼しいというわけではない。黙っていても暑いものは暑い。
俺が何をしたのだろうか。喉が渇く。そりゃあ世のため人のためなんて格好良いことはできやしない。
水が飲みたかった。起き上がるのも面倒だ。暑い、暑い、熱い。この世はやはり地獄なのだろうか。
目を閉じればこの空気は戦場の焼ける感覚に近くて、ぐらりと眩暈がした。気持ちが悪い。
嫌だと思っていても、見る見るうちに鮮明な景色が広がっていく。血生臭い匂いまで思い出す。
熱い、こんなところに居たくない、とても遠くで蝉が鳴いている、とても近くで断末魔が聞こえる。

ひたり、と額に冷たいものが触れた。


「だらしねぇなァ」

瞳を開くとそこは戦場ではなく古い畳の上に自分は居て、くすくすと笑っている高杉の顔があった。
俺の額をまるで新しい玩具のように叩いている。子どものような笑顔だ。手が、とても冷たい。
うまく焦点の合わない目で高杉を見た。そんな俺を見て彼は不思議そうな顔をする。
やっぱり、子どもみたい。俺はもう一度目を閉じた。地獄のような戦場はもう浮かばなかった。
額には高杉の冷たい手が置かれている。それだけで俺を焼いていた炎は消えたのだろう。
意識が無くなるその前に高杉の声を聞いた。「ヅラァ、こいつ熱あるんだけど、どうすりゃいい?」



それはおそらく冬に輝く結晶に似ていて、

四季は嫌いではない。そのどれにでも個性があるからこそ、どれにでも長所と短所がある。
嫌いではない、だけど今日は無理だ。俺は布団の中で縮こまって丸まっていた。
それでも頭だけはまだ辛うじて冷凍されていないのか、考えることはできるようだ。
一層のこと全て凍ってしまえばよかったのに。脳みそが生きているお陰で、寒くて仕方がない。
白い雪原が瞼の裏に見えた。遠くの方はまるで穏やかな海のように美しく白く整っている。
だけど自分の足元には汚れた血の痕や泥で埋め尽くされ、遺体が山のように転がっていた。
それが人なのか天人なのか、見分けが付かないほどにごろごろと折り重なる。気味が悪い。
布団の中で全身が氷のように冷たくて動かない。本当に凍ってしまったのではないだろうか。

ふわり、と額に暖かいものが触れた。


「だらしないねぇ」

瞳を開くとそこは戦場ではなく古い畳の上に自分は居て、にやにやと笑っている銀時の顔があった。
俺の額に触れて楽しそうに前髪を梳いてくる。何がそんなに嬉しいのか。手が、とても暖かい。
うまく焦点の合わない目で銀時を見た。そんな俺を見て奴は不思議そうな顔をする。
間の抜けた顔が可笑しくてやわく笑った後に、俺は目を閉じた。汚れた戦場はもう浮かばなかった。
額には銀時の暖かい手が置かれている。それだけで俺の身を凍らせていた氷は溶けたのだろう。
意識が無くなるその前に銀時の声を聞いた。「ヅラァ、こいつ風邪みたい、どうすりゃいい?」



あの日の僕を救ってくれたのは他でもない君で、君の掌がどれほどの力を持っていたのかを知った。
自分の手には無いものを持っているその手が愛しくて、離したくなくて、どうしても欲しかったのだ。
幻のように僕に触れたあの手は、幻のように僕の前から消えていた。
そして、己の掌を見つめる。すり抜けていったあの手を思いながら僕は今も一人で生きている。
自分の手にぴたりと合わさるのはあれしかなかった。もう届かなくなってから気付いて、己をあざ笑う。

この気持ちが愛というのなら、もっと単純でもっと簡単に手に入っていたような気がする。
だけど他に言葉が思い浮かばないから、今日も僕はそれを愛と呼んでいる。