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【リボーン】一触即発

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カラカラカラーンッ!
 強い西日を受けながら、吹き飛ばされたそれらは、華麗な音を立てコンクリートの上を滑っていった。
「……勝負あったな」
 ロマーリオの一言で、緊迫した空気が途切れる。
 雲雀は荒い息そのままに俯くと、握るものを失った自分の両手を呆然と見た。
「俺の、勝ちだ」
 口端を吊り上げ言葉を発した目の前の男を睨む。その視線にディーノは軽く肩をすくませると、足元の二つのトンファーを拾い上げた。
「ついてこい、恭哉。お前をもっと強くしてやる」


 (……まるで子猫のようだ)
 それがディーノの雲雀に対する第一印象だった。
 どこをどうみればこの人物が問題児なのか。応接室で初めて出会ったとき、想像していた人物像との違いに、ディーノは困惑した。
 しかしいざ拳を交えてみれば、戸惑いは直ぐに消えた。
 重い一撃、計算されつくした動き。この華奢な身体のどこにそんな力が潜んでいるのか、一瞬にしてディーノは、その小柄な体系を上手く利用した雲雀の戦闘方に魅了されていった。
 綺麗、だという表現はおかしいだろうか。無駄のない鮮やかすぎるその動き。まさしく「綺麗」だという言葉がピッタリだった。
 (……確かにこいつは問題児だな)
 ディーノは軽く苦笑した。
 こいつの存在がじゃない。こいつの、恭哉の、その完璧に慣れすぎた戦い方が、危険なのだ。
 (油断すれば直ぐにこっちが飲み込まれちまう)
 気が付くと、雲雀の冷めた視線がディーノを鋭く射抜いていた。
「あ、え?はは…」
 ディーノは咄嗟に乾いた笑みを見せる。
 雲雀は面白くなさそうに鼻を鳴らすと、再び視線を前に向けた。
 (――面白い)
 目の前を歩く、闇に染まった髪を見つめる。
 (こいつが一体どう変貌を遂げていくのか、じっくり拝ませてもらおうじゃねえか)
 瞬間、シュッという音と共に、顎先にトンファーの腹が押し付けられた。

「何考えてたの」

 不機嫌な声色が言葉を繋ぐ。
 鋭い眼光が真っ直ぐにディーノの瞳を見つめた。
 獲物を捕らえた黒豹のように、気高く、そして誇り高く、瞳の奥が光っている。
 ディーノは気迫に息を呑みこんだ。

「―――僕は二度と、あなたには負けない」

 言葉と共に、冷たい金属の感触が離れていく。瞬間呪縛が解けたように、ディーノの身体から力が抜けた。

 (――落ちるわけにはいかない)