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Call me!!

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部屋にはカリカリと帝人君がペンを走らせる音と、カタカタ俺がキーボードを叩く音だけが響いている。今日は帝人君の家にクーラーがなく、暑くて課題に集中できないから、という理由でめずらしく自ら俺の家に来ている。

ちなみに会話は最初に、わかってるとは思いますが邪魔しないでくださいね、これ明日までに提出しないといけないんです。と言われてそれに俺がわかってるよと返しただけだ。
はたしてこれは会話と呼べるのだろうか。仮にも世間一般で恋人と言われるような人物の家に来てそれだけというのはちょっと酷いんじゃないかと思う。

まあ、そんなわけで俺は今健気にも帝人君の言うとおり黙ってパソコンで暇をつぶしているわけだ。しかし特に目新しい情報もなければ面白そうなこともないのでそろそろ飽きてきてしまった。
彼がうちに来て二時間弱。自分にしてはよく耐えたほうなんじゃないかと思う。少しくらい俺に構ってくれてもいいんじゃないだろうか。
そういえばいつも耳にする言葉を今日はまだ聞いてないなと思いだした。

「帝人君」

パソコンのあるデスクの椅子に座ったまま呼びかけてみたが全く反応がない。彼の意識は明日提出しなければいけないと言っていた課題に向けられたままで、俺からは彼の背中と頭しか見えない。

「・・・帝人君」

今度は彼のうしろまで行って呼んでみた。一瞬ペンの動きが止まったものの、なんの反応もなく俺に背中を向けたままだ。

「み・か・ど・君!」
「うるさいです。黙っててください」

と背中を向けたまま言われた。今の彼にとっては恋人よりも課題のほうが大事らしい。さすがに俺でも悲しくなってきた。新羅なんかは君がそんなことで悲しむなんてありえない!となんとも失礼なことを言うかもしれないが、俺だって普通の人間なわけであって、恋人の言動に喜んだり悲しんだりする。

「みかどくーん・・・」
「うるさいです」
「みかどくんみかどくんみかどくん!」
「あーもう!なんなんですか臨也さん!」

そう言ってペンを置いてこちらを向いた帝人君をぎゅっと抱きしめた。抗議の声があがるが気にしない。

「本当にどうしたんですか、臨也さん」
「んー?なんでもないよ」

そう言って彼を抱きしめる力を少し強めた。
ただ君に名前を呼んで欲しかっただけ、なんて言えやしない。
作品名:Call me!! 作家名:乃亜