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ハーモニクス(7/18 青春カップ2発行本サンプル)

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カオスと対戦したとき、試合に割って入ったグランは、彼らのことを意に添わない部下のように扱った。そのときの彼らは、あきらかに納得していない様子だった。詳しい事情はわからなかったが、色々な要素を鑑みて、声をかければ彼らはきっと乗ってくるだろうという予感が僕にはあった。彼らはきっと試合を中断された雷門とだけではなく、かつてのグランと、基山ヒロトと戦いたいと思っているはずだ。彼らの反応を見るかぎり、僕の思惑は間違っていなかったようだった。

彼らは選抜合宿に参加することをあっさり承諾した。出発の日程を告げた僕は、飛行機のチケットを郵送するために住所をたずねる。南雲はそんなものまだ覚えていないとぼやき、涼野がポケットから取り出した携帯電話の画面を見ながら、紙ナプキンの上に施設の住所と郵便物の宛先を書いてくれた。

「携帯、持ってるんだね。番号とアドレスを教えてもらってもいいかな?」

先日連絡を取るとき、彼らが暮らす施設に直接電話をかけ、職員の人に取り次いでもらった僕は彼にそう聞いた。涼野はなめらかな流線型のフォルムをした、極薄型の見たことのない機種の携帯電話を閉じて、軽く首をふった。

「悪いけれど、繋がらないんだ、これは。前に使っていたもので、もう通信機能は切られているからね。代わりにフリーメールのアドレスを教えるよ。何かあれば、こちらに連絡してほしい。日に一度はチェックするから。緊急の用件があれば、電話で呼び出してくれてかまわないよ。つかまらなければ、こちらから連絡しよう」
「そう。わかった。じゃあ、そうするよ」

僕はうなずき、いまさらのように彼らが宇宙人ではなく、対等な立場のただの子供であることを知る。それが彼らにとって、解放であったのか放逐であったのかはまでは知りえない。たずねることもできない。折り畳んだ紙ナプキンを手帳の間に挟み、少しだけ雑談をかわしてから、どちらからともなく席を立つ。

二人と店の前で別れたあと、自転車を拾いに駐輪場へ歩いてゆくその姿をちらりと振り返った。当たり前のことだが、背筋の伸ばし方から歩調まで、彼らのリズムははっきり異なっていて、でも僕はやはり、彼らにどこか同質のものを感じる。彼らを見ているとなんというか、本体の形は違うのに、影の形はそっくり同じ……とでもいうような、奇妙な違和感をおぼえるのだった。
僕がその感覚の正体を知ることになるのは、もう少しあとの話しになる。