それらの感情
梅雨が終わりを告げようとする、その日。
じめりと纏わりつく空気のごとく、うっとおしいヤツが僕の視界に入ってきた。その耳障りな声が鼓膜を刺激し、さらに不快な気分にさせる。
(あぁ、なんでこんな日に…)
うっとおしいなぁ、と感じつつも、無視するのも憚られたので一応、返事をする。
「何か御用ですか、臨也さん」
嫌悪感を剥き出しにして目の前の人物、折原臨也に問いかける。
「帝人くんてば冷たいな~そんなんじゃ女の子にモテないぞ!」
あぁ、本当、ウザイ。そのウザさに思わず溜息が漏れる。
「別に構いません」
そう言うと、臨也はますます楽しそうに笑う。
「そうなの?帝人くんくらいの年頃なら、いたって普通の感情なのに帝人くんはそういう
の一切、興味ないんだ?へ~すごいなぁ!」
相変わらず人をイライラさせる物言いだ。だけど、この挑発に乗れば、ますますこの人を楽しませてしまうだけだと云う事を知っている。
懸命に自分の感情を抑えつつ、目の前の男から顔を背ける。
「用がないんでしたら、帰ります。さようなら」
吐きすてる様に言った後、アスファルトを蹴りつけ駆け出す。
その時、臨也さんが零した言葉に目を少し見開いて、それでも何事もなかったかの様に
僕は、その場を後にした。
「でも、俺にはモテモテなんだけどね」