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その青の下 幼子は狂いと強さを求めた

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その日は本当に快晴で、青く晴れていた。
どこまでも続くような錯覚を起こす、深く果てしない青。

胸がすくほどに、奇麗な青。


そんな見事な青空の下で、幼子は暴行を受けていた。


男が幼子の腹に蹴りを入れると、幼子はたまらず小さな声を上げたが、すぐに何も言わなくなった。
消えかけていく意識の中で、段々痛みが消えかけていく。


「死ね死ね死ね死ね!お前が居るから狂うんだよ、お前が居るから……!」


吊るされていた幼子が地面に落とされ、血に汚れた金色の髪が更に土に塗れれば、それを合図とするように、二人の男がすかさず蹴り始める。

ベキボキ、ゴキュっ!

骨の折れる音なのか、脱臼する音なのか。
それすらも分からないくらい同じ音を聞いていた中、幼子は何も言わなかった。


あと少ししかない意識の中、とうとう痛みすら感じなくなった。
そんな幼子を、大人達はまだ蹴り続ける。


「あんたが居るから! あんたが……!」

「お前のせいだ! お前のせいでおかしくなったんだ!!」

「俺達の家族を返せ! お前のせいで狂ったんだ!!」


自分のせいなのか。


収まらない暴行の中、幼子の意識がそう呟く。

自分のせいで、目の前の大人達は狂ってしまったのか。自分のせいで、彼らはこんなに狂ったのか。
こんなに彼らをおかしくしたのは、本当に自分なのか?


「……お、……のせ…?」


大人達の暴行が少し収まった時。
幼子は自分の体が少し回復したことを確認し、その蒼穹を思わせる蒼い瞳を仰いで、呟いた。


じぶんが、うまれてきたから?


大人達は、その言葉に激昂する。


「聞くまでもないわよっ!! あんたのせいに決まってる!」

「そうだ!! お前のせいなんだ……っ!」


「この、化け狐が!!」


最後の言葉を聞いた瞬間、幼子は意識を手放した。





気づけば幼子は、闇に居た。そしてその闇から、声が響く。


狂エ…


闇が話しかけているような、そんな錯覚を受けながら幼子は声を聞く。


狂エバイイ……


狂う。それはあの大人達の様になれという意味か。


アレラヨリモ更ニ狂エ……
狂ワサレル前ニ、狂エバイイ……


闇は、その呟きに答えを返してきた。幼子はそれを聞いて、初めて声を出した。


「……その誘いに乗れば、お前に狂わされることになるんじゃないのか」


……面白イ事ヲ言ウナ、哀レナ贄ヨ


次の瞬間、その場に光が現れた。


まず幼子の目に留まったのは、目の前にある巨大な門だった。
門には、「封」と書かれた札が張られている。

そんな門の向こうに、それは居た。


化け物だった。


その巨大な牙は、幼子に襲い掛かるべく剥き出しになっている。目の前の門が無ければ、幼子などとうに食われていただろう。
幼子を見つめている双眸は、血よりも赤く爛々と光る。

赤みがかった体毛を膨らまし、九本の尾をうねらせながら睨めつけてくる化物を見て、幼子はすぐに悟った。


目の前に化物が、九尾の狐だと。
これが全ての始めだったのだと、悟った。


幼子を見ながら、九尾は言う。


俺ダケガ貴様ニ力ヲ与エラレル
俺ダケガ、貴様ヲ助ケラレルゾ……四代目ニ選バレタ哀レナ贄


「……助けられる?」


幼子は、その言葉を思わず反復した。九尾はそれに気を良くしたかのように、禍々しく笑い。


ソウダ
俺ナラ貴様ヲ助ケラレルゾ
サァドウスル? オ前ヲ苦シミカラ解放シテヤレルノハ、俺ダケ……


「だったら、どうして今まで助けてくれなかった?」


九尾の言葉を遮って響いた幼子の疑問の声に、九尾の動きが止まった。
一方、幼子の口は止まらない。


「助けることが出来るなら、どうして今まで助けなかった?今までだって何回も何回も何回も何回も何回も何回も死にかけたのに」

「なのに、どうしてその時助けてくれなかった」

無垢な言葉は、止まらない。

「お前だって、俺を助けようなんて思ってない。俺を狂わせて壊して外に出たいだけなんだろう」


「『助けたい』なんて、微塵も思ってないんだ」


九尾はその言葉を聞いて、驚愕の表情を見せた。幼子はそれに、どこか飽きた表情をする。
どうやらこの化け物は、自分がそんな甘言に乗るような単純な性格をしていると思っていたらしい。


「俺は、お前の言う通りにはならない」


狂わされるくらいなら、己から狂ってやろう。


幼子は口角を上げ、笑う。


「お前達を笑ってやるよ! 無様なのは、おかしいのはお前達だって!!」


「強くなってやる! 誰よりも!! …………あははははははははははははははっ!!」


幼子の言葉が、笑いが、その空間に響き渡る。
反響したその声に、どこか悲しみを帯びていた。





「あはははははははははははははははっ!!」


気がつけば幼子は、地面に転がりながら笑い声を上げていた。その空より深い、絶望を映したような青の瞳から涙を流して。
まだ癒えきっていないその体を無理に起こして立ち上がり。少年は笑い続ける。


「あははははははははははははははははははははは………………は」


悲しみすら感じられる狂いの笑い声が、空に響き続けた。





その日は本当に快晴で。
あまりに奇麗なその色に、幼子はただ狂気をぶつけた。