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長谷川桐子
長谷川桐子
novelistID. 12267
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紅い実はじけてしまったら

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癖のない真っ黒な髪はだいぶ短く切り揃えられているが、それが逆に細い首や小さなこうべを強く主張していて少女らしい華奢さを引き立てている。同じ色の瞳は小作りな顔の中で零れ落ちそうに大きい。指定の制服をきっちりと着込んでいて、スカート丈は長め。

平和島静雄の目にうつる竜ヶ峰帝人は今日も可愛い。昨日も可愛かったし、明日も明後日も可愛いのだろう。

だがその可愛いかわいい帝人の小さな唇から零れるのは、今日も明日も明後日も同じ人物の話題ばかり。

「それで、そのとき園原くんが―――」

園原杏里。帝人の想い人の名だ。
一緒にクラス委員をしているのだという。
以前帝人と一緒にいるところを見かけたことがあったが。眼鏡をかけた、真面目そうな少年だった。
大人しそうな少年と少女。それはとても似合いの二人に見えた。

「……告白とかしねえの?」

言葉にしてしまえばそれはぐさりと静雄の胸に突き刺さった。
ショックを受けていること自体もショックだ。
今まで必死で自分に言い聞かせてきた言葉がぐるぐると脳内をまわる。

俺は可愛いものが好きだ。見た目と似合わなかろうと好きだ。恐らくは自分にはないものだから。
だから、これは、可愛いものを愛でたいという想いであって、―――

『間違っても、特別な感情ではない』

ああやはり無理だった。本当は最初から解っていた事。惹かれていたのは最初から。溢れる感情は誤魔化しても誤魔化しきれるものではなかった。

そんなことできるわけありませんむりです!と熟れたような紅い顔を振る帝人を目の前にして考える。とりあえずこの紅い頬に唇を寄せてみれば何か変わるだろうか、と。