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長谷川桐子
長谷川桐子
novelistID. 12267
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なにがしたいんですか!

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顔が違いな、と思った次の瞬間には柔らかくあたたかい感触が唇を掠めていた。あまりに驚くと声も出ないのだなと、頭の中の妙に冷静な部分でそう思う。目の前。未だに常より近い場所にある端正な顔は腹立たしいほどに平常だ。動揺しているこちらが馬鹿みたいじゃないか。

帝人はのろのろと腕を上げて手の甲で口元を拭う。今更ながら顔に血がのぼってくるのを感じる。悔しい。何なんだ。なんでこんなことするんだ。どうしてあんたは顔色一つ変えていないんだ。こっちはこんなにいっぱいいっぱいなのに!

「……臨也さん…」
「なに?帝人くん」
「なにか、言うことはありませんか?」
「帝人くん、可愛いね」

その台詞が馬鹿にするでもなく、さらりと普通に出てくるところにまた腹が立つ。

「いったい、なにがしたいんですか」

喉から搾り出すように呟いた帝人の言葉に、臨也は口角を上げて目を眇める。
にこ、と擬音が出そうな絵に描いたような笑い顔だった。

「強いて言うなら、恋、かな」

鼻先が掠めそうなほど近づいたかと思うと、唐突に遠ざかった顔にはひどく楽しげな笑みが浮かぶ。スキップでもしだしそうな軽やかな足取りでくるりと一回転。そうして恭しげに両の手を取られる。芝居がかった仕草で帝人の指先に唇を落とし、そのまま上目遣いで赤い瞳が見上げてくる。

「俺は君と恋愛がしたんだよ。竜ヶ峰帝人くん」