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長谷川桐子
長谷川桐子
novelistID. 12267
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小さなこどもにでもなったような気分だ

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椅子に座した静雄の膝の上、横抱きにされながら帝人は思う。
どうせ膝の上に乗せられるのなら向かい合わせのほうが(距離が近い感じがして)いいなぁ、と。そう提案したら「…っ、ばっ、……お前、」となぜか真っ赤な顔で言葉に詰まられた。ので甘んじて横抱き。だけれども別にこの体勢が嫌なわけではない。
嫌なわけではないけれど、何やら決意したような表情で、緩く拘束されたまま、数分が経過しているというこの状況はどうにも居心地が悪い。「静雄さん」と何度か声を掛けてみたけれどそのたびに「少し黙ってろ」と短く返され口を噤む。そろりと視線を向けてみると、色のついたレンズの下、伏目がちな金の瞳が見える。そう、こんなに近くにいるのにちっとも目が合わないと言うのはいかがなものか。仮にも(いや、仮じゃないけれど!)想い合っている二人なのに。

―――さみしい

内心ひとりごちた帝人の声を拾ったわけでもなかろうに。伏せられていた瞳が不意に上げられる。ついで頭に軽い衝撃。静雄の大きな掌を落とされたのだと知った次の瞬間にはそれは繊細な動きで帝人の髪の上を滑っていた。
しずおさん、と。再び声を掛けようかと口を開きかけて暫し迷う。なぜかひどく真剣な表情で髪を撫でることに集中しているらしい彼の邪魔をすることは憚られる気がして、結局帝人は言葉を飲み込んだ。……頭を撫でられることは嫌いではないし。むしろとても好ましく嬉しいことであるし。

ただこれ、すっごく……眠くなるなぁ…