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長谷川桐子
長谷川桐子
novelistID. 12267
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僕を挟んで食事しましょう

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屋上にはうららかな日が差し、ぽかぽかとしたいい天気だ。
まだ少し風は冷たいけれど、屋外で昼食をとるのに支障があるほどではない。

「帝人、玉子焼き」
「あ、はい」

どうぞ、と帝人が差し出した箸が大きな口の中に吸い込まれる。

「帝人くん。口あけて」
「え、」

振り向いた先にはひどく整った無表情な顔。ぽかんと開いた口元に一口大のサンドイッチが押し込まれる。もぐもぐと咀嚼すると口内に広がるハムとチーズとほんの少しのマスタードの味。

「……美味しいです。幽さん」

それはよかった。と美麗な顔がほんの少しだけ緩む。
ふわふわと和んだ二人の空気。それを破るかのように、帝人の手、箸を持ったほうの袖がぐいと引かれる。視線を前に戻すと少しだけ不機嫌そうな表情の静雄の姿があった。

「帝人、から揚げ」
「はい、どうぞ」

差し出した箸は再び大きな口の中へ。

「美味しいですか」
訊ねる帝人に静雄は無言で顎を引く。
「幽さんってほんとに何でも出来ますよね」

帝人の細い肩に顎を乗せ、腰にまわした腕に込める力を少し強め。幽はぼそりと呟く。

「帝人くんが喜んでくれたのなら。満足」
「そういえば、幽さん全然食べてないんじゃないですか? 午後お腹空きますよ?」
「…今は帝人くん摂取してるから、いい」

またばかなこと言って。そう言って笑う横顔を間近で見ながら、幽は本心なんだけどな、と口の中だけで呟いて続けた。

「帝人くんが食べさせてくれるなら食べる」

その言葉に、前方から苦情の声が上がる。

「幽、てめぇ……今日は場所譲っただろうが!」
「食べさせてもらっちゃ駄目ってルールはなかったよね?」