色彩りキャンバス
11.最後の手紙が燃えた色
小さな頃、思った。
夢を描いた窓。
世界を映すそれは、きっと開け放せば何処までも続いてるに違いないと。
揺れるカーテンレースにちらつく映像。
鮮やかな世界の色。
やさしくないくせにとても美しい景色。色とりどりにあふれる草原と空。きっとどこまでもいけるに違いない、そんな浅はかな、思い上がったことを秘めていた心。
ただ映すだけの瞳。揺れた心とカーテン。
それは、自分が生きていた場所(生かされていた時間)、見てきた景色(限られていた空の大きさを見てきた)。
おおきな雲が真上を通り、影が自分を覆い、過ぎてゆく。その低い音を心で掴み取る。
この眼に映る世界は穏やかで優しい。思わず脳裏に浮かんだ言葉をただ模った。
ありがとう。
この地に立つための脚。
たくさんの人たちの名前を呼ぶための声、伝えるための喉。
色彩を見分ける目に、たくさんのことを成す為の両手。
命の鼓動を、歌を聞くための耳。
いつか、また会えますように。
祈りなどほんとうは気休めでしかない。
それでも空の上はいつでも晴れているから、きっと祈りだって届くと信じている。
ひたむきな思いだなんてけしていえないけれど、そうありますように。
仰ぎ、途切れ途切れに見えた空は、相変わらずあおかった。
どうか、幸せでありますように。
そして瞼を閉じた。
おとずれたのは、まばゆいひかり。
- Color to which the last letter burns -