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さとやちで七夕

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日本の北海道のとあるファミレスに、とある男と女がいました。
 その男、名をさとーさんと言い、キッチン担当で大層な働き者でした。
 その女、名を八千代さんと言い、フロア担当でこちらも大層な働き者でした。

「12卓の和風御膳あがったぞ」
「はーい。あら、潤君が作ってくれたの? 頑張って持っていかなくちゃね」
「普通でいいからとっとと行ってこい」
「はいはい。行ってきます」

 この二人見ての通り、好い仲でした。
 しかしこの二人、男女の付き合いを始めてからというものの、あまりにも仲が良過ぎて仕事が疎かになり始めたのです。

「うわーまたイチャついてるね、佐藤君と轟さん」
「山田、いずれは相馬さんと共にあの二人の子供になりたいです!」
「とはいってもチーフが一方的に佐藤さんに話しかけていて、佐藤さんは仕事中だからと持ち堪えているようですね。あと山田、それはおかしい」
「佐藤さんと八千代さん、いいなぁ……私もいつかは小鳥遊君と……」
「はらへった」


 主に周りが。


 かたなし君、これなんかおかしくない?
 全然おかしくありません! 首を傾げる先輩もかわいい!
 ……ええと続きだね。


 暇な店でしたから最初こそ何とかなってはいたものの、遂にお腹を減らしたきょーこさんが怒ってしまいました。

「おい良い加減にしろ。私は腹が減ってしようがないんだ。佐藤、飯だ飯。八千代はパフェだ」
「はい杏子さん、ただいま。潤君、悪いけどお願いね」
「ちっ、分かったよ」

 八千代さんはいつも通りにパフェを作り、さとーさんも釈然としない気持ちで御飯を作ってあげました。
 なぜ釈然としないかと言うと、付き合い始めてからも今まで通り、いや、今まで以上に御飯を作ってあげていたのにいきなりこんな事を言われたからです。


 何できょーこさんは怒っちゃったの?
 二人の交際は認めたものの、大切な妹分があまり自分の世話をしてくれなくなったからじゃないかな。
 けどさとーさんも今まで以上に御飯を作ってあげてたって言ってるよ?
 うーん、店長にも色々と思う事があるんじゃないかな。でも大丈夫だよ種島さん。まだ気付いていないだけで店長にも好い人がいるから。
 そうなの? 相馬さんって何でも知ってるね!


 それで。
 遂にその日がやってきてしまいました。
 きょーこさんがさとーさんと八千代さんのシフトを何の説明もなしにずらしてしまったのです。
 これには最初、当人達も困惑してしまいました。
 が、別にシフトが一緒にならなくても会う時間は作れますし、寧ろ周りと八千代さんが仕事に身を入れられるようになるならそれでもいいんじゃないかとさとーさんは思うようになりました。
 

 さすがさとーさん、お店やみんなの事を第一に考えているんだね!
 ただの杏子さんのとばっちりでここまで考えられる佐藤さんもすごいね……杏子さんも二人が揃ってないとお腹が空くんじゃ……


 さとーさんは自分の考えを八千代さんに話しました。勿論、周りの事やきょーこさんの怒りの事は伏せて。
 理由も知らずにシフトをずらされた八千代さんはすっかり落ち込んでいました。

「なあ八千代。今回のシフトの事なんだけどな」
「うん……」
「みんな最近たるんでるだろ? それで一度しっかり考え直すように店長が組んだんだよ。だから俺達のシフトも別になったんだ」
「私が潤君のところばっかり行ってお仕事してないから……?」
「お前は充分チーフとしてやれてるよ。ただ俺が駄目だったのかもしれん」
「私のせいよ!」
「違う! お前のせいじゃない!」
「私!」
「俺だ!」



 山田、限界です。何だか甘酸っぱくなってきました。屋根裏に帰ってもいいですか? もう当分の間デザートは要りません。
 はは……仲良いね……駄目だよ葵ちゃん、帰らないでね……



 これを陰から見ていたきょーこさんは、悲しみに明け暮れる八千代さんを見て不憫に思い。
 また、二人を見ていたら甘い物を食べて満腹になったような気がして満足したので、これまで以上に御飯とパフェを作る事を条件に二人のシフトを以前よりもっと一緒に組むようにしました。
 

「潤君潤君! きょーこさんの御飯、一緒に作りましょ!」
「分かったからちょっと落ち着け」

 その条件を受けた二人は今まで以上に仲睦まじく仕事に励むようになりましたとさ。





「恋人か……いいものかもしれんな」

 ついでに、きょーこさんが恋愛に興味を持つようにもなりましたとさ。

作品名:さとやちで七夕 作家名:ひさと翼