thanks log
01
沈殿したキャラメル色の世界の底から見上げる空。
揺るぎなくきれいで、やさしくて、ほっとするメロディラインに蛍光色のコードが波打った。
ショッキングピンクのヘッドフォンを首に引っ掛けサイケと呼ばれる青年は声を弾ませる。
「つがる、くるよ、きっと、もうすぐ」
「歌えるか?」
「もちろん」
「俺が戻ってくるまで、頑張れるな」
「がんばれる、がんばる」
しっかと和装の青年の袖を握り締めて彼は意思強く頷いてみせた。
津軽と呼ばれるそのもう一人の青年は、肩に引っ掛けていただけの羽織に腕を通し、頭一個分くらい下にある黒髪の小さい頭をわしわしと褒めるように撫でてから、世界の空の果てを見上げた。そんな彼の傍らで嬉しさ半分照れくささ半分にへらりと笑っていた青年も同じ様に空を見上げ、興奮冷めやらぬ様子で念を押すように、がんばろうと呟く。
空気を漂う透明な 0 と 1 にうつくしい音の屈折率が泳ぐ小さな空間。
二人の足元に広がるリノリウムに似た床は碁盤の目のような柄がどこまでも続く。
「一丁派手に暴れてやろうじゃあねえか」
絡んでいたサイケのコードを解きながら津軽は意気込み拳を打ち鳴らす。
古風も古典もお誂え、自慢の煙管を携え彼は堂々の啖呵を切って障子を開き、振り返らずに身を投じた。
※ 型式的には津軽が先でサイケが後
※ 津軽=基本漢前、大体何でも謡えるが日本語以外は苦手
※ サイケ=基本純粋培養、コミュニケーション能力が低めだがジャンル言語問わず何でも歌える
※ うた(謡/歌)-戦闘や治癒などをはじめ、様々な力の媒体となる
※ という夢を見たんだ。
作品名:thanks log 作家名:toro@ハチ