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あなたを守る盾になりたい

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現在、執務室には二人の人間がいて、その間には沈黙が走っている。
先にこの部屋の持ち主である少年、竜ヶ峰帝人がその沈黙を破り口を開いた。

「臨也さん」

呼びかけられた青年、折原臨也は不貞腐れた表情で帝人から目をそらして何も答えない。室内に再び沈黙が走る。

「臨也さん。僕の言いたいこと、わかってますよね」

それでも臨也は何も答えない。そんな様子に呆れたように帝人からため息がこぼれる。

「折原臨也少佐」

先ほどとは違った冷たい声色で、全てを見透かすような青い目が真っ直ぐに臨也を見つめる。その視線に耐えられなくなったように臨也が口を開いた。

「・・・あいつらが悪いんだ」

不貞腐れたような呟きが静かな室内に響く。相変わらず目はそらされたままだ。その発言に帝人から再びため息が漏れた。

「僕はお話ができるように彼らを捕まえてください、と言ったはずですが」
「あいつらが帝人君に銃を向けるのがいけないんだ」
「だからって大怪我を負わせて病院送りにするような人がどこにいますか」
「・・・ここにいるよ」

反省している様子の全くない臨也に帝人は本日三度目になるため息を吐き、幸せが逃げてしまう、と少し現実逃避をした。臨也は何か事件が起こるたびにこうなのだ。さすがにそろそろどうにかしなければ、と帝人は思う。臨也がテロリストなどを病院送りにするたびに上から嫌味を言われるのは直属の上官である帝人なのだ。帝人はまた今回も嫌味を言われるんだろうなと考えると頭が痛くなる気がした。

「そんな屁理屈求めてません。これじゃあ当分話を聞けないじゃないですか。それにたとえ僕に向かって銃が撃たれたとしても、大丈夫なことをあなたは知っているでしょう」
「どうだか、いくら力があったって帝人君、鈍いから撃たれちゃうかもしれないじゃないか。それになんでいつもいつも、指揮官が最前線に来るの。俺毎回来るなって言ってるよね」

赤い瞳が帝人を見据え、それに今度は帝人が沈黙する。

「そ、それは僕みたいな子供が上に立つには僕自身が最前線で動かないと示しがつかないと思って。それに、あなたたちだけに危険な場所へ行かせて、自分だけ安全な場所にいるのは嫌なんです・・・」

もごもごと話す帝人に、臨也は大げさにため息を吐いてみせる。

「だからー、それは俺も同じなの!俺の大事な帝人君が誰かに傷つけられるのは嫌なの。とにかく、悪いのはあいつらで俺は悪くないからね!」

それだけ言いきるとツーンとそのままそっぽを向いてしまう。反省する気はさらさらないようだ。室内を本日何度目かの沈黙が支配する。

「はあ、まったくあなたって人は・・・。もういいです、次から気を付けてくださいよ」

そういって毎回許してしまう自分に、次もきっと許してしまうんだろうなと帝人は心の中でそっとため息をついた。
作品名:あなたを守る盾になりたい 作家名:乃亜