エイプリルフールにはつけない嘘
貴方のその見透かす様な綺麗な瞳を、一分間閉じていてください。
(そうでもしていないと、きっと敏い貴方は僕の胸の内を頼みもしなくても暴いてしまうでしょうから)
そうして、その貴方の嘘吐きな口を三分間閉じていて下さい。
(そうでも言わないと、貴方の口から紡がれる憎たらしい嘘をいつまでも聞いていないといけないでしょう?)
(そんなの、僕はお人よしな善人では無いですから、きっと堪えられません)
そして、次に貴方の瞳を見つめる事が出来れば、
僕はきっと貴方に言う事が出来る。
(きっとその瞳に怖気づく事も無く、貴方と対等になれさえすれば)
「臨也さん」
「なあに?帝人君」
「僕、貴方の事大嫌いなんです」
「・・・・エイプリルフールはもう過ぎたけれど?」
「ええ、だからこそですよ」
(いつもいつも貴方は僕に嘘ばかり吐くから)
(今度は僕が)
(でもお決まりの日に言っては面白くない)
(だから、今日にです)
上目づかいで彼を見つめる。
そうしてにこりと無邪気な笑みを作って、次の瞬間。
ぐいっと襟元を掴んで、そのまま顔を近づけた。
至近距離で見つめた貴方の顔が驚いているのを見るのは、
僕にとっては酷く愉快な気分でした。
そのまま今度はすっと離れてもう一度見つめなおして、
目の前の惚けた面の男に言ってやった。
「しかえし、です」
満足感に満ち溢れた顔で笑いかけると、苦笑いで返される。
「ああ、全く・・・・してやられたよ」
(心臓と、理性に物凄く悪いから、本当にやめてよ)
(嫌です。もし・・・・襲いでもしたら、二度と臨也さんには会いませんからね)
(・・・・手厳しいなあ)
エイプリルフールにはつけない嘘
(いつものしかえしだから)
(四月一日じゃ、駄目なんです)
作品名:エイプリルフールにはつけない嘘 作家名:白柳 庵