恋とはどんなものかしら
柔らかくて優しくて綺麗なもの。
少年が「恋」という言葉から連想するもの。
「帝人くんは、夢見がちだなぁ」
その言葉に苛立ちを感じつつ、少年は目の前の青年に聞いてみる。
「じゃあ、臨也さんはどんなものだと思うんですか?」
「…身勝手なもの、かな」
「身勝手?」
「自分本位で相手を傷付けて独占して。上手く操ってるつもりでも、いつのまにか操られてて…」
そこで溜息を一つ落とつ。
「ほんと、迷惑で身勝手なもの」
やっかいだよねー、と呟きながら少年へと目を配らせる。
「やっかいだって、わかってるんだけどねぇ…」
「?」
「帝人くんは、恋をしたいの?それとも、しているのかな?」
「…したい、とは思っています」
「じゃあ、僕にしてみる?」
「は?」
「してみたいって事は決まった相手はいないんだよね?じゃあ、相手は僕にしておきなよ。しかも…」
シニカルな笑みを浮かべながら語っていた青年の表情が少しだけ硬くなる。その僅かな緊張感に少年は、ドクリと胸を高鳴らせる。
「今なら恋愛への発展権を付けちゃうよ!お得だと思うんだけどなぁ」
「恋愛への発展権?」
「ほら、恋は一人で出来るけど恋愛は一人じゃ出来ないからね」
「どっかの、タラシみたいな科白言わないで下さい」
「実際に口説いてるんだけどなぁ」
そんな、軽い言葉とは裏腹に真剣な表情をした青年に少年は思わず、言葉を詰まらせる。
「…臨也さんて」
「ん?」
「ほんと、ウザイですよね」
帝人くんは相変わらず辛辣だねぇ、そう、ごちる青年の表情が、何やら寂しさを携えていて、少年は少しだけ罪悪感に苛まれる。
(…そんな風に、軽く言うから)
少年はぎゅっと拳を握り締め、青年を睨みつける。その顔は真っ赤に染まっていた。
「…でも、考えてといてあげます!」
恋とは、柔らかくて優しくて綺麗で…でも、仄かに毒を感じさせる、やっかいなもの。
作品名:恋とはどんなものかしら 作家名:白鳥