二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

呼んでも返って来ぬと知りながら、返しを求めてその名を呼び続~

INDEX|1ページ/1ページ|

 
【呼んでも返って来ぬと知りながら、返しを求めてその名を呼び続ける私は愚か者なのでしょうか】


「お兄ちゃん!──と遊んで?はーやーくー、起きてよ!」
これが現実(いま)でない事ぐらい分かっている。でも、幸せな夢だ何時までも浸っていたい、ひどく幸せな夢。
今、彼女の名を呼べば答えてくれるのだろうか。
いつまでも此処にいたい。でも俺にはしなくてはいけないことがあるんだ。
「お兄ちゃんは一緒のところには行けないんだよ。」
意を決して告げる。告げると少女は寂しそうな顔を湛えると泣きそうな顔のまま、小さく手を振る。
「ばいばい、お兄ちゃん。」
「──!」
暗闇が自分を覆い、光の中に佇む少女はどんどんと遠くへと離れていってしまう。
別れを告げたのは自分であるにも係わらず思わず伸ばそうとしてしまった己が手。しかし、冬で凍えているかのように冷たく動かない。最後に呼んだ名前はあの子に聴こえただろうか。


「うぁっ、はぁはぁ。」
最悪の目覚めだ。骨が軋み、全身に鋭い痛みが走った。
両親と妹を失ってから毎日の様に見た悪夢に、24歳になっても苦しめられるのか。
まだ光を得ぬ閉じたままの目からつぅと涙が伝う。
呼んでも届かぬその名前、父親の名前、母親の名前、妹の名前。
―ニール、お兄ちゃんになったんだから強くなってこの子を守ってあげてね。
お母さん。
―こら、駄目だろう!妹を泣かせては。
お父さん。
―お兄ちゃん、大好き
誰も守れなかった。

「ロックオン!」
これは誰の声なのか、何をそんなに焦っているのか。
「気が付いたんだな。」
ゆっくりと 開いた視界、左目のみの視界には
「刹那?」
銃口を向けられても動じなかった筈の彼が今にも泣き出しそうな顔でこちらを見ているではないか。どうしたんだ?お前らしくも無い。負けん気も強いお前の事だ、よっぽど辛い事があったのか?話してみろよ、俺が何とかしてやるから。俺達仲間だろう?
「せつ…な」
僅かだが血の通い始めた腕は意思どおりに動く。今にも零れ落ちそうな涙を拭おうと右腕を彼に伸ばすと、
「良かった!本当に良かった!」
ぱしっと受け止められ片の手を包み込むように両手で握りこまれた。
包みこんだ彼の手は生きているのか分からなくなるくらいに冷たい。
「刹那?」
これはまだ夢なのだろうか、彼は大丈夫なのだろうか。
宇宙空間に落ちていくエクシアを俺は見た。国連軍の操るガンダムの機体に狙われていた彼も。
「待ってろ!人を呼んでくるから!」
握りこまれていた手をゆっくりと下ろすと、彼は視界から消えていく。その姿を追い
首を傾けるが彼はもうドアの前。
待ってくれ、夢なら覚めないでくれ。
俺から家族を奪い、今度は彼まで奪うというのか。
刹那、声になりそこねた音が空気を濁す。

頼む、頼む。
刹那を、この子を俺から奪わないでくれ。守りたいと思ったこの子を俺から奪わないでください。

「刹那。」
すんなりと、声が出る。ドアの外に出た彼は此方に視線をやると、
「直ぐに戻る!」
普段の余り変わることのない表情が何処へやら、「泣き笑い」を浮かべると。
「待ってろ、ロックオン」

返ってきた。
なんと嬉しい事か。
幸せの涙を流すとロックオンはゆっくりと目を閉じた。