米英詰め合わせ
チョコ味のドーナツ(米一人称)
「よっし、そこだっ!!」
ベースボールの超展開に興奮して、ポップコーンの入ったバケットを抱え込んだまま、振り上げた左手が、別にわざとじゃないんだけど、ソファの隣でドーナツ食ってたアーサーの肩にモロに当たっちまった。
「おぁっ、」
「ぶふっ!」
許可した訳ではない俺の隣に勝手にいるコイツが悪いんだから、謝る気は無か
ったけど。
何か視線がチクチクするし、シカトした事で臍を曲げて妖精さんなんか召喚さ
れた日にはたまったもんじゃない。
だから、短い説教程度なら受けてやってもいいかなぁ-と。
まぁ仕方なく、なんとなくアーサーの反対に向けていた顔を、ソッチに向けてやったんだけども。
「……ひっはい、ふぁんふぁんはひ? ふぁめりか」
膝に乗せたドーナツ箱から取り出したうち一つ(しかも俺がいっちばん好きな、チョコにナッツの奴)をくわえて、ねっとりと不機嫌そうに睨んで来たんだ。
その澄んだ緑の中で、俺といったら、普段、耳にタコが出来るくらい言われてるような、つまりは馬鹿みたく口を開けた顔で写っていて。
ええと、うん。……仕方ないよなぁ。セオリーは外せないもんなぁ。
大スペクタクルを謡う映画とか、家族総出で大笑いなコメディとか、お約束に弱いのが俺様だもんな!!
てな訳で、お約束通りその半分を貰い受け(しかも、ソファの上にクズを零さないように一口だぞ! 偉いだろ?)、ついでに口の端に付いてた残りまで舐め取ってやった、親切な俺な訳なんだが。
「ななななんなんだよ君って奴は!! 日本みたいにTPOとか言わないけどさ
ぁ、せめて常識ってものをだなぁ……!」
真っ赤な顔したイギリスに、すっごく怒られてんの。何で俺が? 納得行かない!
しかも、予想とは反してまだまだ続くみたいだったから--
「大体、君っていうのだは……ッ」
上から唇で塞いで黙らせてやった。二の句が告げないよう、ちゃんと舌まで絡ませてやってね。
しょうがないよなぁ? お約束だもんな!!
――少なくとも、俺とこいつの間ではね。
その2:
「……ひっはい、ふぁんふぁんはひ? ふぁめりか」
行儀が悪いよな等と頭の隅で思いながらも、ドーナツくわえたまま、軽い抗議を含めて睨んでやったアルフレッドは、馬鹿みたいに大口あけてこっちを見て来た。
「? ……!」