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となりの臨也さん・2

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竜ヶ峰と札の掲げられた部屋のドアを開ける。
玄関は鍵と子供の世話を押し付けてきた女の生真面目そうな性格を表しているように、綺麗に片付いていた。
靴箱の中には男物の靴と女物の靴、そして小さな子供の靴の3種類が置いてある。
中でも子供の靴が一番多い。形も色もさまざまあって、その時々に合わせて変えているという感じだ。
一番少ないのは男物の靴で、シューズとサンダルしか置いていなかった。
もしや父親はこの家で居場所がないんじゃなかろうか?母親が子煩悩過ぎて父親が追いやられるのはよくある話。
この家も例外なくそうなのかもしれない。


「おっジャマしまぁーす」


穿いていたサンダルを放るように脱いで、真っ直ぐリビングへ向かう。
そこは玄関と同様に綺麗になっていて、子供がいるとは思えないほどシンプルな色合いの部屋だった。
部屋の隅に絵本ラックが置いてあるが、中に収まっているのは大人が読む哲学的な絵本。
小学校入学の為に引っ越してきたという情報が確かなら、子供はまだ6歳のはず。
そんな子供がこんな本を読んだりするのだろうか・・・いや、まあ絵本だから子供が読んでもおかしくはないが。
これはもしかして、子煩悩に見せかけた教育ママという奴か?
ここまで考えつくと子供の方にも予想はついてくる。
なんだか急に興味を失ってしまった俺は早く家に帰ろうと、くるりと身を翻した。



「だあれ?」


振り返った先に立っていたのは一人の少年。
おそらく、というか間違いなくこの家の子供の竜ヶ峰帝人君だろう。
風邪を引いているのか頬はほんのり赤く、おでこにはヒエピタが貼ってある。
どこか眼がぼんやりしているように見えるのは寝ていたからだろうか?
観察に夢中になって応えずにいると、困ったような表情でおそるおそる口を開く。


「・・・もしかして、天使さま・・・ですか?」

「は?」


今、この子はなんと言った?天使って言ったか??
天使といえば神の御使いで、白い布を纏ってあるいは裸で、背中に翼を生やして頭の上に金色の輪っかを浮かばせている非現実的な存在だ。
自分の姿を確認するが、そんな天使像とはほど遠い。
休日ということでラフな格好ではあったが、上から下まで黒ずくめ。
どう考えても子供や俺の性格を知る人が見たら悪魔しか思い浮かばないだろう。
それなのにどうやったら天使という考えに行き着くんだろう。
俺の反応に自分の発言を恥かしく思ったようで、少年は赤い頬を更に赤く染め、顔を手で隠してしゃがみ込んでしまう。


「えーと・・・俺は折原臨也、君は竜ヶ峰帝人君だよね」

「あ、はい!りゅーがみねみかどですっ!!・・・・・・っ!?」


俯いていた帝人君は名前を呼ばれて元気よく返事をする。
だがそこでやっと俺という存在が不審者であると気付いたのか、眼を恐怖の色に染めて見つめ返してきた。
本来ならそれは俺を発見した時点でするべき反応だ。


「あぁ、怖がらなくていいよ。俺は君のお母さんに頼まれて君の面倒見に来ただけだから」

「おかあさんが・・・?」

「そう、あと九瑠璃と舞流はわかるかな?俺はあの二人のお兄さんなんだよ」


警戒心を解こうと母親の存在を口にすると一気に顔色が変わっていく。
妹二人のこともわかったようでそこで完全に警戒心は解けたようだ。
ふらふらと俺に歩み寄ると帝人君は「よろしくおねがいします」と頭を下げた。
その姿がなんだか可愛らしくて思わず抱き上げてしまう。
ただでさえ大きく見えた瞳が、顔が近づくことでより一層大きく見えた。
体はやわらかくて触り心地がよく、頬に触れると熱かった。
・・・熱い?


「・・・もしかしてすっごい熱出してない?」

「ねるまえは39どでした」

「帝人君、部屋どこ」


俺は帝人君が指差した部屋に急いで入り、そこにあるベットに帝人君を寝かしつけた。
そしてすぐに洗面所とキッチンへと向かい、濡れたタオルと氷の入ったビニール袋を用意する。
それを持って戻るとまずは帝人君のおでこに貼られたヒエピタを外し、濡れたタオルを乗せる。
次にわきの下に氷の入ったビニール袋を入れようとした・・・が、


「あの・・・おかあさんがいってました。こどもはよくねつをだすから、くるしくなければだいじょうぶだって・・・」


そう言って、やんわりと俺(というより氷入りのビニール袋)を拒絶するように帝人君の小さな手が俺の手を押してきた。
確かに子供はよく熱を出すから大騒ぎしなくていいとは聞いたことがある。
だがそれは39度の熱でも該当するのだろうか?
こんなことなら暇つぶしに子供の医学でも熟読しておくんだったと後悔する。


「・・・でも、ありがとうございます」


落ち込んだ俺を元気付けるように微笑んで見せる帝人君は天使のようだった。
あの気の強そうな母親がこの子を溺愛するのも納得できる。
あまりの可愛さに我慢ができなくなって帝人君を抱きしめようとした瞬間、携帯電話の着信メロディが流れ出す。
出てみれば案の定、俺が朝から待ち望んでいた妹達の荷物を届けに来たという宅配便からの電話で、そいつのタイミングの悪さを呪った。
しかし、よく考えればこの荷物さえ受取ってしまえば帝人君の傍に居放題ということだ。
俺は帝人君の顔を覗き込んで精一杯、出来る限り全力の優しい笑顔を向ける。


「今からちょーっと宅配の荷物受け取りに行ってくるね、すぐに戻ってくるから良い子で待ってて」


帝人君がコクリと頷くのを確認して、頭をよしよしと撫でてやり部屋を後にする。
少しでも早く帝人君のところに戻りたくて玄関の前で荷物の到着を待った。
待つ間も色々と考える。
どんな話をしようかな、親のこと、友達のこと・・・あぁ、でも何より帝人君自身のことを知りたい、教えて欲しい。
夕飯は何を作ってあげよう・・・うちにカボチャがあったからそれで甘いカボチャのおじやでも作ろうか?
甘いものは好きなのかな、子供だから好きだよね。
あぁ、楽しみだなあっ!
そこで思う。
自分は帝人君が好きだ、と。
今まで見てきた何よりも帝人君が大好きだと。
そうしてそれを認識することでより一層、竜ヶ峰帝人が好きになった。
もっともっと彼を好きになりたい、愛したい。そして愛した分だけの愛をもらいたい。
どうすればいいかは明白だ、彼は確実に優しさに弱い。
ありったけの優しさを彼に注いで、愛して、愛してもらおう。


「あぁ、もう・・・帝人君ラブっ!!」
作品名:となりの臨也さん・2 作家名:朱羽りん