濡れたカラス
手足は縄で縛られ、口は布で塞がれいた。
少年の視界だけが覆われず、その黒い目を見開き、濡れさせていた。
怯えきった少年に赤林はやりすぎたかと、思うが、思うほど気にしてはいなかった。
私情を挟むつもりはなかったのだが、引き攣った表情で赤林を見る少年にぞくりとした。
こんな少年に赤林の琴線に触れるものがあったのだろうか、嗜虐趣味なんてないのに、赤林はさらに少年を苛めたくなった。
泣かせて、鳴かせたい。
赤林は少年にはたいして興味はなかったが、これは暇つぶしにはちょうどよく、いい余興になりそうだと思った。
獲物か何かを見る赤林の目にただならぬものを感じたのか、少年がなんとか逃げようと試みるが上手くはいかない。
「おいおい、どこへ逃げようってんだ?無駄なことはよしな。それよりも、愉しいことしようか」
赤林は少年の顔を掴み、耳元でそう囁いた。
少年の顔が絶望に染まり、それを見た赤林はどくんと心臓が唸り、血が沸いた。
うすらと笑う赤林に少年は今何を思っているのだろうか。
赤林は初めて少年が何を考えてるのか興味がわいたが、今は自分の荒ぶった身体を少年にあてるのが先だった。
蠢く指に少年が面白いほど反応する。
赤林は布で塞がれた口に接吻がしたくなった。
少年は赤林に抱かれた日、ボロボロになったその身体で逃げ出した。裸の身体にシーツを巻いただけの状態でビルの外へ駆け出したのだ。
まさかそれで逃げ出すとは赤林も思わなかったが、少年の身体は本当にボロボロでそんなに素早く動けずすぐに若いもんに捕まった。
これは赤林の判断ミスであった。身体も心も疲れ切ってると勝手に思っていたのだ。
少年は確かに疲れていた。逃げ出したはいいが、すぐに捕まったのだ。
床にシーツを巻いただけの格好でグッタリとしていた。それを見下ろしていた赤林はぞっとした。
少年の疲労しきった表情に騙されそうになるが、その黒い目は、昨日は絶望と恐怖に濡れていた黒い目は興奮と好奇心に満ち溢れていた。
これはなんだ?
赤林は少年の名前を思い出した。
「りゅうがみね、みかど」
帝人は自分の名前に反応し、顔をあげた。