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鐘が鳴る

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 鐘が鳴る。重々しく、けれど規則正しく。

 ――まただ。

 俺は鐘の音を何度も聴いていた。前に聴いたのは一昨日の晩の夢の中だったかもしれないし、もしかすると一週間程前、ドラゴンの背で一瞬意識を手放したあの時だったような気もする。

 ――鐘の音には違いないだろうが、どこの鐘だ?

 考える間にも鐘は鳴り続ける。鳴り、続ける。

 ――こんなに長くこれを聴くのは初めてだ。

 これまでは二、三度鳴るだけで、意識はすぐに覚醒した。なのに、今回は妙に長い間聴かせられている。
 鐘の音は最初こそ規則的だったものの徐々にリズムが揺らいで、これがひとつの曲になっているのだと解った。
 緩急をつけて鳴らされる鐘。やがて緩やかなリズムを忘れた鐘は狂った様に打たれる。


 りん
 ごん
 りん
 ごん
 りん
 りん
 りん
 ごん
 ごん
 りん
 ごん
 りん

 ごん



 りいん





 再び緩やかに打たれ始めたあたりで覚醒する。テントの隙間から光が漏れ出していた。

 ――朝だ。今日も戦おう。すべて俺が殺して終わらせてやる。すべて。すべて。






(すべて終わらせるのは鐘の音であるというのにまだ彼はそれを知らない)

作品名:鐘が鳴る 作家名:みしま