二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

となりの静雄さん

INDEX|1ページ/1ページ|

 
春休みが終わって、高校生になった。
池袋の喧嘩人形・平和島静雄は入学式を終えて、珍しく何事も無く帰路につく。


(今日はまだ一度も怒ってねぇな・・・)


おそらく中学時代から初めてではないだろうか?
中学入学のときに出会った天敵、世の害悪の詰め合せ、死すべき・・・いや、殺すべき存在の折原臨也がいたせいで、たった半日でさえも平和な時間などはなかった。
そのウザいノミ蟲は入学式に来ていたらしいのだが、まったく視界に入らなかった。
友人の新羅の話では何か用事があるらしく、俺に構っている暇がないと言って避けて隠れていたらしい。
いつもそうなら俺がブチ切れる必要もないのに・・・
明日もその用事が続きますように、と心の中で願いつつ自宅の前まで辿りついた。

ふと見ると隣の家の前に引っ越し業者のトラックが1台停まっている。
そういえば去年辺りから隣は空き家になっていた。
どんな奴が引っ越して来たのだろうか?
できれば平穏で自分や弟に対して、我関せずを貫いてくれる人がいい。
余計な関わりを持って暴力を振るってしまうのはなるべく避けたい。
相手が殺したいほどムカつく奴であったならば話は別だが、平和な家族を何かの拍子でブチ切れて傷つけてしまうのは嫌だった。

少しだけ覗いて見ようかと隣家へ足を向けたとき、その家から子供が飛び出してくる。
そしてその少年は俺を見つけると眼を真ん丸く見開き、そして嬉しそうに指差しながら叫んだ。


「へいわじましずおだあああああああっ!!!!」

「・・・あ?」

「あんた、しずおだろっ!オレしってるぜっ!!いけぶくろさいきょーだろっ!?」


よし、殴る。
・・・いや、待て、相手は子供だ。
しかもまだ小学生になるかならないかという少年だ。
手加減したとしても殴ったら確実にケガをする。
ダメだ・・・抑えろ、俺。殴るべきはこの子供じゃない。
殴るべきなのは、この子供に人の名前には「さん」付けをしろだとか、年上の人間には敬語を使えだとか教えてなかった親の方だ。
じゃあまずそこのガキをとっ捕まえて親のところまで案内してもらおう。


「おい、ガキ・・・」

「お、静雄じゃねえか」


子供へと手を伸ばそうとした瞬間、子供の後に続いて見知った姿をし、見知った声を出す人物が現れた。
それは間違いなくバイト先での上司で、自分の世話をしてくれている人物、トムさんだった。


「そういや会わせたことなかったよな。こいつ、俺の息子で正臣ってんだ」


唖然とする俺を余所にトムさんはじゃれつくガキをひょいと抱え上げる。
確かにトムさんが結婚しているのは知っていた。
その相手が仕事仲間のヴァローナというロシア人女性であることも知っていた。
だがその二人の間に子供がいたなんて一切まったく知らなかった。


「いや、しかし隣見に行きたいって家出てすぐ静雄に会うなんて正臣は運が良いなあ」

「ラッキーボーイだろっ!」

「そうだな。そんじゃあ、なんか美味いもんでも食いに行くか」

「やったーっ!おれステーキがいいーっ!!」


目の前で繰り広げられる親子の会話に腹を鳴らすと、きょとんとした二人の眼がこちらを見る。


「静雄も来るか?」

「しずおもくんのっ!?」


腹の音が聞こえてしまったことを恥かしく思いつつ、俺はコクリと頷いた。



俺の返事に満面の笑みを見せた正臣が心底可愛いかったが、
この時は気のせいだと思っておいた。
作品名:となりの静雄さん 作家名:朱羽りん