君に出会えた奇跡1
今夜もそのお客は来た。茶色の柔らかそうな髪にオリーブ色の瞳、可愛らしい顔はいつも仏頂面で笑ったら可愛いのにといつも思う。その客はいつもデザート類を買って帰る。甘党なのか、いつも一人分を買って帰る。
アントーニョはいつもの様に笑顔でレジをうつ、しかし今夜は一つだけ決意を胸に秘めていた。幸い、店内には自分一人しかいない。
「460円のおつりになります。それとこれ。」
お釣りと一緒に、自分の名前、携帯の電話番号とメールアドレスを書いたメモを手渡した。
「一目惚れしました。どうか俺と付き合ってください。」
そうしたらそのお客は顔を真っ赤にして買った商品も忘れて店を飛び出してしまった。
「あぁ!! お客さん待ってや!!」
アントーニョは慌てて商品とお釣りを持ってお客を追いかける。
ロヴィーノはいつの頃からか毎週火曜日の深夜にコンビニに行く習慣をつけていた。それは、彼がいつも火曜日は夜勤でコンビニにいるからだ。
名前はアントーニョだと胸につけている名札でわかった。いつも優しそうな笑顔で接客していて、深夜だからちょっとだけ眠そうな顔をしている。
それは単なる片思いで、きっと臆病な自分は思いもつげられずに彼がこのコンビニを辞めるまで通い続けるんだと諦めていた。
それが、今夜、奇跡が起こった。アントーニョの方から告白された。名前すら俺は教えていないのに、その瞬間ロヴィーノはそのメモだけ持って店を飛び出してしまった。数メートル走ったところでそのメモを見つめる。なんてメールを送ろうか、自分は名前すら教えてないんだ。まずは名前から教えてあげないと、そんなことを考えていると後ろから声をかけられた。
「商品忘れとるで。」
「えっ…あっ悪い……。」
振り返るとアントーニョがいて商品とお釣りを受け取る。
「なぁ、俺のこと気持ち悪いと思った?」
その問いかけにロヴィーノはぶんぶんと首を横に振った。
「えっ、気持ち悪くないってもしかして…」
「ロヴィーノだ!! 俺はロヴィーノ、お前と付き合ってやる!!」
ロヴィーノがそう言った瞬間、アントーニョにきつく抱きしめられた。
「ほな俺ら両思いだったんやな。嬉しいわ。ありがとロヴィーノ。」
そう言ってとても嬉しそうにするアントーニョにロヴィーノも顔がほころんだ。
「あっ笑った顔可愛ええなぁ。天使みたいや。」
嬉しそうにそう言ってチュッと頬にキスをされた。
その後は、職場をいきなり放棄しかけたアントーニョが店長に怒られたりと色々あったが二人は晴れて付き合うことになった。