或る夏の日
「臨也…何しにきたんだ…?今は仕事中だから、」
「あぁ、仕事ならさっきのが最後だぞ?」
一瞬悲しそうな顔をした臨也だが、トムさんの言葉を聞くと嬉しそうに笑った。
くそ、可愛い…。
「ね、シズちゃん、この人…」
「あぁ、会った事ないのか?珍しいな、情報屋のくせに。」
そう言うと、臨也はぷう、と頬を膨らませて仕方ないでしょ、と言った。…何が仕方ないんだ?
「この人は田中トムさんだ。俺の上司で、先輩で…すげえ良い人なんだ。」
トムさんは言い過ぎだ、と言ったけど実際その通りなのだ。
「た、田中さん、宜しく…お願いし、ます…。」
臨也は俺の背中に隠れながら、恥ずかしそうにぼそぼそ喋った。
トムさんは、珍しいモノでも見るかのように臨也を見つめ、微笑みながら「トムでいいぞ、宜しくな、折原。」
そう言われて臨也は目をまるくして、ふにゃっと笑い、「トムさ、ん。臨也、でいい。」と言った。なんだこれ。
微笑ましいな。
トムさんは臨也の頭を乱暴に撫でながら「よし、寿司でも食いに行くかあ!」
臨也を真ん中にして、俺達は歩き出した。向かう先は、勿論、露西亜寿司だ。
「臨也は何が好きなんだ?」
「お、大トロっ」
「お、なかなかいい趣味だな」
「こいつ、昔っから良いもん食ってますからね」
「何だよ、金持ちかぁ!」
三人で笑いながら寿司を口へ運ぶ。
たまにはこんな日も悪くない。