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対峙する出会い

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この来良学園は池袋に創設された私立のマンモス校である。
この少子化の時代にも関わらず、1学年400名は超える生徒が在籍している。
その中で、もっとも有名な2名の生徒がいる。

1人は――

「折原臨也?」
「そう!そうなんだ帝人。ぜーったいに関わるなよ!?関わっちゃダメだぞ!?」
「そう言われても・・・昨日もこんな会話したよね」

昨日付で転校してきた2年生、竜ヶ峰帝人はその純朴そうな表情に呆れを滲ませていた。
それもこれも幼馴染であり、この来良学園に転校することになったきっかけでもある紀田正臣の異様なテンションにである。

「昨日は俺の力も足りなかった!反省した!こーの困ったちゃんめー」
「人のおでこ突くのやめてくれない?」
「そうそう、帝人君のおでこは俺だけのものだよね」
「それなら仕方ねぇな・・・・・・ってぇ!?」

聞こえるはずのない声に、制服の裾がはためく勢いで正臣が振りかえる。
背後には「やぁ」とさわやかな声で、さわやかな笑顔で手をする黒髪の上級生が立っていた。
その顔をみて、帝人が極まったような声を上げた。

「うわぁカッコいい人・・・」

顔だけは美形だ。
だがこの人間の良い部分はそこだけだ、と知り合いになったすべての人間がそう断言する、唯一の美点でもあった。
帝人の褒め言葉に機嫌を良くしたのか、さらに目を細めて臨也は笑った。

「こんにちは竜ヶ峰帝人君?ようこそ来良学園へ!」
「あ、どうもこんにちは、よろしくお願いします。先輩です・・よね?」
「あぁそうだよ。俺は3年の折原臨也。君の先輩」

私服登校が許されている来良学園においても珍しい黒の短ランを軽く広げて見せる。
警戒するように正臣が声を出した。

「で、何の用ですか臨也さん。っていうか何で帝人のことを・・・」

帝人を背後にかばい、疑問を投げかける正臣に、臨也はふぅっとわざとらしくため息をついた。
わかるでしょー、とひとりごちて

「昨日シズちゃんと立ち回ったんだって?おかげで今校内君の噂で満載だよ。まったく、俺の計画も台無し」
「計画?」
「んっふっふー、なーいしょ!紀田君には教えてあげなーい」

くるりとその場で回って、臨也は帝人に意味ありげな目線を投げかける。
じぃっと見つめてくる帝人に、パチンと音が鳴りそうなウインクをすると

「じゃ、後でね!ぜぇったいに会いに行くから、シズちゃんに構ってたら殺しちゃうよ!」
「んなこと言われて誰が帝人を渡すかーーっ!!」

思わず掴みかかろうとする正臣の手をひらりとかわすと、高笑いをしながら臨也は走り去った。
その後ろ姿を少し考え込むような姿勢で見送った帝人がポツリとこぼす。


「あぁ・・変態なんだね」
「そうなんだ。気をつけろよ」

正臣はノリよく返した。



「やぁ、来てくれたね帝人君」
「正臣を委員会に呼び出したのは折原先輩ですか?今日は委員会ないって言ってたのに突然決まったそうですが」
「ん?君がそう思うならそうかもねー」

放課後の空き教室に帝人と臨也は対峙していた。
とは言っても2人の間にそれほど緊迫した空気はない。どちらかと言うと久しぶりに会った友人に対するような緊張感だった。

「まあ座りなよ」

紳士的に椅子を引いてやると、帝人は「長話をする気はないんで」と冷たく断った。
さすがにその言い草に片眉を跳ねあげると、口元は微笑んだまま臨也は無造作に隠しナイフを取り出した。
冷たい刃が蛍光灯の光を反射する。

「へえ・・おびえたりとかしないんだ?まぁそうじゃないとシズちゃんに近づくなんてできないか」
「あの人は優しい人ですよ、多分。知り合ったばかりなので断言はできませんが」
「しないでいいよ。あんな化物。君は本当に変わってるねぇ」
「あなたほどじゃないですよ甘楽さん」
「あはは俺は一応普通のにんげ―――・・・え?」

とっさに呼ばれた名前に反応できず、笑っていた臨也がぴたりと止まる。
優勢を疑わなかった余裕の表情が驚愕に変わった。
その様子をみて、帝人が安堵するように胸に手を当てて降ろした。

「あぁ良かった!やっぱりあなたが甘楽さんなんですね、違ってたらどうしようかと・・・」
「・・・え、何ちょっと待って、なんでそれを」
「あ、えっと、僕ちょっとだけネットに詳しいんです。あと、一応池袋には『使える手足』もあるんです」

そこで臨也はニヤリと口を歪ませた。

「ダラーズ?」

ダラーズとは・・池袋を拠点とするカラーギャングの一つだ。
他のチームとは違って、独自のカラーがないこと、携帯で誰でも登録できること、リーダーの姿を誰も知らないこと、が特徴である。
臨也はこのダラーズの創始者が、目の前にいる幼い姿をした少年だと言うことを知っていた。
揺さぶりの意味も込めてダラーズという言葉を出したのだが、帝人の笑顔に変化はない。

「いえ、ダラーズとは少し違いますよ。それにダラーズの動きだったらあなただってわかるじゃないですか」
「・・・そりゃぁ、ねぇ。ははっ、驚いたなー・・昨日から驚きっぱなしだよ帝人君!さすがは帝人君だよ!」

バッと両手を広げて感動の意を示す。
実際臨也は本気で感動していた。
まさかこの田舎から出てきたばかりの少年が、臨也のネット上の姿も調べ知った上で、現実に交流を持とうとしているのだ。
帝人に話しかけたのは自分が手を貸してやったダラーズのトップに、地球上でもっとも嫌う人物が近づくのを良しとしなかったため、静雄から引き離す目的もあって声をかけたのだが、まさかこんな展開が待っているとは想像もしていなかった。
帝人に好意的に近づいて、その心を掴んでダラーズを思い通りに動かす、そして静雄と引き離すという目論見だったが、それをあっさりと覆した。

「人間はこんな進化があるから面白い――、うん、しばらく君に手を貸してあげる。情報が欲しくなったら言うといい。ま、当然料金はいただくけど」
「お金取るんですか?」
「俺は情報屋目指してる人間だよ?無償で動くなんて、最初っから自分の価値を低くするようなことしたくないんだよね」
「・・・わかりました。どうにもならない時だけお願いします」
「はいはーい、了解しちゃいました!私甘楽はぁ田中太郎さんのおねだりに弱いんですぅ!」
「・・・・・・」
「・・・その絶対零度の視線やめてくれない?」

はっ、と小さく帝人は鼻で笑い、それでは、と目礼して身を翻した。
その小さな背中に臨也は妙な高揚感を抱きながら

「あ、お代はカラダでもいいよ」
「死んでください、さようなら」

ぴしゃんと音高く扉は閉められた。
作品名:対峙する出会い 作家名:ジグ