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おめかしをさせてみたいです

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休日の午後。家にいるのも暇すぎて、特にすることもなく池袋の街をただぶらぶら歩いていたら、面倒な人に捕まった。

「ハニー、その服こないだも着てなかったっけ?お気に入り?」

挨拶もそこそこに、六条さんはいきなり今僕が着ている服(ユ○クロのセール品)をしげしげと眺め出した。ストローハットを片手で押さえながら、少し背を曲げて視線を僕の胴体部分に合わせている。なんだか面白くない。幼馴染と感じが似ているせいかもしれない。正臣と僕との身長はそこまで違わないから、なんだか、慣れないのだ。
ため息を一つ吐き出した。

「そういうわけでもないですけど。ていうかこないだっていってももう4日前ですよ?また同じ服着てたって別におかしくないでしょう。ちゃんと洗濯してますし。ていうか誰がハニーですか」
「?他のハニーたちは会うたび違う服着てるぜ?」
「苦学生に何を…というかその前に女の人と男の僕を一緒くたにしないで下さい」
「そうか、ハニーは金欠なのか」
「ねぇ人の話聞いてました?それといい加減ハニー呼びやめて下さい」
「よし、今日はショッピングだな。決まり」

六条さんは一人で勝手に決めて一人でうんうんと頷くと、僕の腕を掴んですたすたと歩き出した。
(ちょ、冗談じゃない)

「いやあの僕今持ち合わせがあんまりっていうか月末で無駄な出費はなるべく抑えたいっていうか」
「そのくらい俺が出してやるから大丈夫。ほら行くぞー」
「あああああああ゛」

いくらナンパ野郎といえども暴走族ヘッドの腕力に、殴り合いの喧嘩なんてまともにしたこともない貧弱な高校生男子が敵うわけもなかった。

そのままずるずると連行されて、現在、試着室の中。
店に入るなり六条さんはそこらへんにかけてあった服を何枚か適当に選ぶと、僕と一緒に試着室の中に放り込んだのだ。
はぁ、と本日何度目だったかのため息をついて、何となく服の値段を見てみる。どうやらブランド店のようなのだ、この店。

「え、なにこれ」

ぴらっと値札を捲った途端、思わずそんな声が出てしまった。いつも僕が買っている服より0が一つ以上多い。何考えてるんだろうあの人。先程の言葉が本気だとしたら、女の子ならともかく野郎の服にこんなにお金かけてどうしようっていうのだ。もし後で請求されても払えるわけがない。苦学生の懐事情を知っているんだろうかあの人は。けれど。
(…まぁ、試着するだけならタダだし)
普段手に取ることのない、ブランド品。僕だって一応年頃なんだから、興味くらい湧くのだ。
手にしたままだったシャツに、少しドキドキしながらも慎重に腕を通してみた。

「ハニー、着替え終わった?」
「あ、はい」

カーテンの向こうから六条さんの声が聞こえた。いちいち声をかけなくても、カーテンを少し開けて覗き見ればいいのに。男同士なんだから。

「んじゃ、開けるぜー…おお、可愛いじゃん」
「誉めてないですよねそれ」

六条さんの隣には、店員らしき女の人がいた。待っているあいだ暇だったのか、今の今まで何か話していたようだ。お似合いですよお客様、お決まりの文句が耳を通り過ぎていく。
白いシャツ、黒地に装飾の付いた、かっちりとした印象の黒い上着。お揃いのパンツ。そして赤いネクタイ。少し曲がっていたそれを六条さんが直してくれたけど、何を思ったのかすぐ解いてしまった。

「お姉さん、これと同じ色のリボンタイってない?」
「あ、ストライプ柄でしたら…」
「それで構わねぇよ。悪いんだけど、ちょっと持ってきてくれないかな?」
「分かりました。お客様、少々お待ち下さい」
「リボンって…六条さん、僕、男なんですけど…」
「別に男がしてたって変じゃないだろ?」
「そうかもしれないですけど…」

リボンと聞いて真っ先に想像したのは、園原さんがいつも制服に付けているあれだったのだが、店員のお姉さんが持ってきたのはもっと細いものだった。ほんとにただのリボンといった感じの。ますます男が付けるものではない気がする。
六条さんは手早くそれを僕の首元に結びつけると、満足そうに笑った。

「うん、思った通りだ。ハニーはこっちのが可愛い。似合ってる」
「…やっぱり誉められてる気がしません、六条さん。あと何度でも言いますけど、ハニーって呼ぶのやめて下さい」

結局それらの服はほとんど全部六条さんが買ってくれた。
ほとんどというのは、一番安いリボンタイの分だけは半ば無理矢理自分でお金を払ったからだ。おかげで財布がとても軽くなってしまった。荷物持ってやるよ、と言ってくれた六条さんの笑顔がやたら輝いていた気がするけど、気のせいだろうか。
そういえばあのネクタイはセット品で、リボンのほうは別売りだから、形状は違うとはいえ、ネクタイを二つも買ってしまったことになる。
どうしようかな、これ。