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give and take

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「私があげられるのはこれだけ」
 戦場ヶ原はそう言った。僕はありがたくその一つを受け取っていた。

「――というわけで阿良々木君もいい加減わかったかしら」
「わかった……ような気がする」
「偏差値0の阿良々木君には厳しかったかしら」
「だから何で十の位を四捨五入するんだよ。しかもこの間の模試は偏差値53だった」
「何を威張っているの。どうせ判定はZなんでしょ」
「模試の判定にZはないぞ。戦場ヶ原」
「あら、B以下を取ったことがないからわからなかったわ」
 髪をかき上げながらそんな嫌みを言う。まあ、いつものことだ。
「さてお茶でも淹れなおしましょうか」
「ああ、ありがとう」
 暑い中飲む緑茶は意外と美味しいというのを最近知った。戦場ヶ原のおかげだった。
「なあ?」
「何?」
「僕は何もあげられない」
 僕は戦場ヶ原からたくさんのものをもらった。それに何一つ返せやしない。
「馬鹿ね。私はいっぱいもらったわ」
 戦場ヶ原は僕に鋏を突き付けて言った。とりあえず、それを首に当てるのはやめてくれ。
「優しさをくれたわ」
「それはお前にだけじゃないさ」
 爆は馬鹿だ。本当に大切なものを選べずに失ってしまうような。そんな馬鹿だ。千石の事件のときも僕は肝心なものを失うところだった。
「知ってるわ。阿良々木君は馬と鹿に謝るべきだと思うくらいの馬鹿よ」
 そこまで言わなくても。
「でもそんな馬鹿な阿良々木君だから私はここにいるのよ」
 ああ、その笑顔は反則だ。そんなことされたらいつまでたっても僕はお前に何も返せない。
「なら返せるまでずっと一緒にいて」
 その言葉に僕は了解、と頷いた。

 少なくともこのギブアンドテイクはなかなか終わりそうになかった。
作品名:give and take 作家名:冬月藍