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失羣の鳥

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かすが、は。
ただ恍惚とした。
その姿を一目見て、その御方にあのように見つめられて。
その真正は、ただ神々しかった。

かすがは忍である。
だからして、情報は多かった。
毘沙門天と結縁しているのは知っていた。
仏縁が深いと。戦神であると、多くの人の口の端に上っていた。
ただ、情報は真実というには、あまりにも足りなかった。
かすがは忍である。
廉恥の無いことではあるが、謙信公を暗殺せんとしたにも関わらず、その御方に下った。
これだから忍は、という声はどこからも聞こえた。
謙信公の周囲からもである。
これだから女は、という声も誰からと聞こえた。
多くは、昔ながらにかすがを知る草の者たちからである。
だがそれとて全く、かすがの気に障らなかった。
あの方に下る理由が一つでも多くなった気さえした。
最早かすがには謙信公を害す声ばかりが敵意の対象である。
かすがは忍である。
それゆえに、神威には敏感である。
忍の術の多くには妖しめいたもの、神懸かったものが多い。
鍛錬の多くは心身共に鍛えるものであるし、神に仕えるものの修行も含まれる。
卑しい身である事は骨髄まで分かっていても、事実として卑しくあってはならないのが忍である。

で、あろうからだ。

謙信公のご尊顔を拝し奉ったとき、眩むほどの神性に中てられたのだ。

かすがは何の因果か綺羅綺羅しい容姿に生まれ。
何の因果か忍の里の子として、生きねばならなかった。
君な忘れそ、と事あるごとに言われた。
記憶に残りすぎるその姿は、忍として使えない。
だからと言って、その姿に傷をつけようものならますます人に覚えられてしまう。
だから君は戦忍としての道しか、生きる術はない。
諜報にも隠密にも使いにくいのだから、草の者として人に接することの少ない戦忍とならねばならぬ。
里を知る者なのだから、人の中に生かすことさえ許されぬ、と。
だからだろう、かすがは誰よりも術に通じた。
そして、だからだろう、謙信公の真正に中てられた。
佐助とて同じ育ちをしているが、生憎かすがは女である。
女であるからこそ神性には男よりも近い。
夜を飛ぶものだからこそ、強い明かりには惹かれずに居れぬのは忍ならば誰でもだ。

謙信公はかすがを「わたくしのうつくしいつるぎ」と呼ぶ。
ものの見事にかすがが誇りとする全てを呼び掛けに込める。
あの方にそう呼ばれ、かすがは全てが死んで、全てが生まれた。
過去に共に飛び続けていた群れの者たちは死んだかすがの繋がりだ。
最早、会えますまいよ。

かすがは満足気に夜に忍び笑う。








『失羣の鳥』
 ※群れからただ一羽はぐれてしまった鳥の意。
作品名:失羣の鳥 作家名:八十草子