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花言葉は復讐+続編-手繰る糸、繋ぐ先

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続編:Last


 サブちゃんはどうやら、坂上に苦手意識があるらしい。小さな子供にするように撫で回されても、水牛のような角を引っ張られても、ろくに文句も言わずにおとなしくしている。
 過去に何があったか知らないが、これならソロモンの笛を使わずに済みそうだと綾小路は思った。ソロモンの笛とはフルートによく似た横笛で、サブちゃんのような高位の悪魔はその音色を苦手としている。綾小路は、サブちゃんが交渉に応じなかった場合、その笛を見せつけて脅すつもりだったのだ。
 
「かつて坂上君の先生と契約を交わしたのはお前だな、サブちゃん」
「いかにもそうだが、十年以上前の事だ」
「何年前であろうと、お前がやったことには変わりないだろう。契約者も既に死んでいるわけだし、坂上君の身体から倉田さんの魂を切り離してやってくれないか」
 
 サブちゃんの答は、意外なものだった。
 
「それは、できない」
「まさか、新たな契約が必要になるのか?」
「そうではない。願い事が正確でなければ、受理しかねるということだ」
「……どういうことだ?」
「なるほど」
 
 とまどう綾小路の後ろで、それまで黙って見ていた日野が口を開く。
 
「坂上の記憶違いだな。倉田の魂は坂上の身体に結び付いているのではない。そうだろ、サブちゃん」
「……その通りだ、人間」
 
 サブちゃんの答に、綾小路は眉根を寄せた。
 
「じゃあ、倉田さんの魂は何に結び付いている?」
「その質問には答えられない」
「坂上と倉田は、肉体と魂で結び付いているわけではないんだな?」
「……そうだ」
「ほお。なら、魂と魂が結び付いているとか?」
 
 日野は洋館で見た本に書かれていたメモを思い出しながら問い掛けたが、それに対しては否定が返ってきた。
 綾小路は少し考えてから別の質問を試みる。
 
「……坂上君は倉田さんの身体は処分されたと話していたが、倉田さんの身体は葬られたのか?」
「いや」
「……そうか、わかったぞ。坂上君と倉田さんは、身体ごと一心同体になったんだな?」
 
 サブちゃんはようやく頷いた。
 
「よかった!じゃあ恵美ちゃんを元に戻してくれないかな?お願いだよ、ポチ」
「う……わかった。だが、いいのか?」
「え?」
「元に戻すということは、契約時の状態に戻すということだ」
 
 それを聞くや、坂上──いや【恵美】は、サブちゃんを突き放して激しく拒絶を示した。
 
「いや!いやよ!あの状態に戻るなんて、絶対にいや!!」
 
 契約時の【恵美】は身体中に火傷を負い、手の施しようがない状態だったのだ。
 
「ポチ……恵美ちゃんの火傷を治せ」
 
 再び坂上に戻ったが、様子がおかしい。赤く輝く両眼が、刺すようにサブちゃんを貫く。
 
「し、しかし、修一……」
「しのごのいわずにやれ!角引っこ抜くぞ!」
「ひっ!」
 
 サブちゃんは慌てて坂上の身体に術をかけた。怪しげな光が辺りに漂い、坂上を包みこむ。
 やがて坂上の隣に、肉体を伴った【恵美】が現れた。
 
「うふふふふっ!やったわ!これで私は晴れて自由の身よ!
お母さん、お父さん、待ってて、今帰るわ!!」
 
 叫びながら去っていく【恵美】の背中を、三人と一匹(?)は呆然と見送った。
 
 
 
 
 
 それから。
「坂上、俺はお前のことが……」
「あっ!日野先輩っ、おしるこドリンクが特売だそうですよ!」
「──っなにぃ!? 一缶55円だと! 価格破壊じゃないかっ!」
「やっぱりここまでしないと売れないんでしょうか……?」
「何故だ……あんなに旨い飲み物は他に無いというのにっ!」
 
 【恵美】の邪魔が入らなくなったにも関わらず、日野は坂上に想いを告げる機会を逃し続けている。
 
「このままじゃスーパーがおしるこドリンクを仕入れてくれなくなるかもしれませんよ。買いに行きましょう!」
「そうだな。箱ごと買い占めて友人知人に布教してやろう……手始めにサークルの連中だな!ひゃーっはっはっは!」
 
 しかし、日野はそれでもいいか、と思っている。
 話を逸らす時の坂上の耳の赤さ──差しあたってはそれだけで十分だ。焦ることは無い。
 
「そうだ日野先輩、今日は僕の部屋に寄りませんか?」
「……え?」
「先輩と一緒に夕御飯を食べて、ゆっくりお話してみたいです。その……今まで恵美ちゃんがいたから、言い出せなくて……」
「坂上っ……!」
 
 顔を真っ赤にして見上げてくる坂上の頭を思わず抱き包みながら、日野は誓った。
 
 やはり今日こそは、と。
 
【Colpevoleより再録】