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花言葉は復讐+続編-手繰る糸、繋ぐ先

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肉体の苦痛に負けて自分を捨てたのは【恵美】だ。それはお前だけの罪じゃないだろ!?」
 
 どう考えても一番責められるべきは子供の魂を弄んだ大人だ。そしてそいつはもう、罰を受けている。
 
「お前はどうしたいんだ坂上。そいつらと一緒にいたいのか?
俺は──お前と生きたい。
明日も明後日もその先も、お前に会いたい」
 
 痺れる腕、垂れ散る汗。
 掠れた声が喉を震わせ、坂上の手から鉈が落ちる。
 
「僕は……っ」
 
 その瞳からぽろぽろと滴を零して、坂上は俺の腕を掴んだ。
 
「僕も、先輩と一緒に、生きたいっ……です!」
 
「修一!?」
「修一君っ」
「兄さん……!」
 
 彼らの動揺を置き去りにして、俺は坂上を攫った。
 
 階段を下りる途中、ボイラー室から爆発の衝撃が来る。やはり故障していたのか。上がる火の手から逃れようと、俺達は窓から外に転がり出た。
 
 
 炎はあっという間に広がり、館を飲み込んで崩れていく。その様を眺めていると、坂上が小さく声を漏らした。
 
「どうした?」
「あれを……」
 
 その視線の先に揺れる弟切草が、みるみるうちに淡い紫の花へと変化していく──。
 
「あの花は……」
「ライラックですよね」
「なんだ、知っていたのか」
「奥沼さんに教えてもらったんですよ」
 
 奥沼といえば、我が大学農学部園芸科の奥沼美里のことだろう。俺と同学年だが、どこでどんな風に知り合ったのか、坂上と親しくしているらしい。
 それを思い出して、何故か心がざわめく。その理由を、俺はもう知っていた。
 
 【恵美】は、今はただ坂上の意志の力で抑えられているだけで、まだ坂上の内側に存在する。坂上が幼い頃彼女に抱いていた思慕が消えない限り、彼女が坂上から出て行くことはないだろう。
 それを面白くない──と感じている俺がいる。
 
 いつの間にか雨は上がり、頭上には満天の星空が広がる。
 星明りに照らされた坂上はライラックの花弁にそっと指先で触れ、俺に微笑みかけた。
 
「明美姉さんが気に入っていた花でした。
花言葉は……」
 
 
 初 恋 の 痛 み ── ……。 
 
【09.12.22 - Colpevoleより再録】
 
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