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カツカツとチョークが黒板を叩いている音が聞こえる。周りを見れば黒板に書かれた文字を一生懸命に書き写している級友の姿があり(ちなみにクラスで一番中のいいリョーチンこと良次はぐっすり眠っている)、椎名もそれに倣ってノートの上にシャープペンを走らせた。
 この程度の内容ならば教科書を読むだけで大抵のことは頭に入ってしまう椎名にとって、ノートをとるという作業ははっきり言ってしまえば無駄でしかない。小学校の授業のように定期的にノートを集め、教師がチェックするというシステムがなくなったのを良いことに椎名のノートはほとんどメモ帳と変わらない様相となっている。
「椎名! さっきの時間寝ちゃったからノート見せて!」
 やっぱり、そう思いながら先ほどまで使っていたノートを差し出す。
「げ、やっぱ椎名のノート意味わかんない」
 パラパラと中を捲り、リョーチンがげっそりと声をあげた。
「もうちょっとわかりやすくノート取ってよ」
「これだけで十分わかるよ」
 あまりとっていないとは言っても、本当に必要な部分はちゃんと書き付けてある。そう言ってもリョーチンは納得しないような顔でノートを椎名の机の上に戻した。
「いいもん、テスト前に椎名に直接教えてもらうから」
「授業中寝るのやめたらね」
「だって最近部屋の隅っこになんかいるような気がして寝れないんだもん」
「バッカ野郎!」
 スパーンと気持ちの良いくらい大きな音が教室中に響き渡った。視線という視線が自分たちの元に集まってくる。
「あ、てっちゃん」
「てっちゃん、急に叩いたら痛いよ!」
 てつしの手には一冊のノートがある。さっきの音はてつしがそのノートでリョーチンの頭をはたいた音だ。音が派手だっただけでたいした威力はなかったらしく、リョーチンが元気に言い返しているのを見て安心した。
「そういうことあったらすぐ相談しろって言ってんだろ」
「うん、ごめん」
 相変わらず仲間思いのてつしを見て思わず笑いがこみ上げてくる。しかし――
「てっちゃん、それ俺のノートだから」
「あ、ごめんごめん」
 はい、と返されたノートにはリョーチンの髪の毛がくっついている。
「ありがと椎名! あっやべ、そろそろクラスに帰らねーと」
「うん。それじゃ」
「それじゃまた放課後ね〜」
 てつしがバタバタと慌しく教室から出て行くのを見送ってから、リョーチンが椎名の机の上にある英語のノートを手にとった。
「贔屓だよね、これは」
「……何のこと?」
 リョーチンは英語のノートを広げながら椎名を睨みつけてくる。が、かわいい顔が仇となって正直あまり怖くない。ふわふわの髪の毛をぐしゃぐしゃと撫でてみるとリョーチンはぷくっと頬を膨らませた。
「英語のノートだけきれいなの、てっちゃんが英語苦手だからなんでしょ」
「さあね」
 適当にはぐらかして答えると、リョーチンは「俺だって数学苦手なのにー!」と言いながら更に膨れてみせた。
「ふぐみたいだね、リョーチン」
「……椎名は良いお嫁さんになると思うよ」
「……誰の」
 少しだけ間が空いた。長い付き合いのリョーチンにはそれが自分が動揺したからだと気付かれたらしい。「誰のだろうね」とうそぶくリョーチンの笑顔はいたずらが成功した子どものそれと全く一緒だ。
「リョーチン、」
「あ、もう先生来るよ! それじゃ!」
 流石に少し怒ってやろうと思ったのにタイミングが悪かった。リョーチンがひらひらと手を振って自分の席に戻るのを黙って見送り、自分も席に座る。
(お嫁さん、ね)
 なれる訳ないだろうと思いながらも、少しだけ嬉しいと思ってしまったことは、永遠に胸にしまっておこう。
作品名:無題 作家名:香坂