優しい嘘つきとそれを受け入れた少年の話
「帝人君」
あまやかで、優しくて、
(そうして残酷で)
貴方のその笑顔も、頬に感じる手の体温も、名前を呼ぶ声さえも
(全部、全部。僕の目の前にあるのに)
どうして、
(貴方の瞳に映る僕は、こんなにも悲しそうなんだろうか?)
(疑問ばかりが胸に積もって、感傷が身体を蝕んでいって、)
嗚呼、どうしてくれようか!
(全てが欲しいのに。どうしようも無く遠すぎて、僕の手になんて収まってくれないんだ)
「臨也さん」
名前を呼べば、返ってくる笑顔。
優しい、貴方のその姿は手を伸ばせばすぐ其処にあるのに。
(届かない、と錯覚してしまう)
「・・・・臨也さん、臨也さん」
(きっと、それも全て僕は知っていた)
もう随分と前から、きっと気づいていた。
(それを知らん振りしていたのは僕の我が儘で、)
(僕の、竜ヶ峰帝人の、最後の意地で、)
「大好きですよ」
それもこれも全て僕の一人芝居だなんて!
(全ては最初から決まっていた事だったのでしょう?)
「僕達、ずっと一緒ですよね」
「・・・・そうだよ」
そう答えながら僕の頭を撫でる手を感じながら、ゆっくりと目を閉じる。
(うそつき、)
(本当は僕の知らない何処かに行ってしまうくせに!)
「僕の事、好きですか」
「うん、」
「大好きだよ、帝人君」
優しい嘘つきとそれを受け入れた少年の話
(残酷な嘘と優しい貴方。)
(きっと全てが虚構なのに、)
(それら全てを許してしまえるのは、惚れた弱みだからなんて本当は知っていたんですよ!)
作品名:優しい嘘つきとそれを受け入れた少年の話 作家名:白柳 庵