××××製造工場
「何だ、ココは?」
五十嵐直子は困惑していた。最近どうも一般的な日常からかけ離れているとはいえ、目の前の現実は今までの非常識を凌駕している。何せ漫画や映画などにありそうな地下施設にいるのだから。
今日は友人の桜弥生の家に遊びに来ていた。茶を淹れると席を立った弥生を待つ間、パパムパで遊んでいた。ところがパパムパが壁にあった謎のスイッチを
『ポチッとな』
とやってしまったのである。何てベタなことを、とツッコむ前に椅子がガコン、と音を立て、気付けばこの場所にいた。
「ったく、どうなってんだよ」
辺りを見回しても、出口らしきものはない。あるのは床を這う無数のケーブルと人間でも入れる大きさのポッド、そして少ないが照明のランプだけだ。
「そういえばパパムパもいねぇな」
しかしそれはどうでも良い。どうせいても騒ぐかボケるかで邪魔になるうえに、戦力にはならない。むしろいない方が良いか、と直子は再び周りを見回した。そしてしばらくはどうしようかと考えていたのだが、直子は気が長くない。
「ここから出しやがれ!!」
手近なポッドを片っ端から蹴り出した。責任者でも出てくればココから出られると踏んだのである。最悪の場合は脅してでも、と凶悪なことを考えながら。
「オラッ!」
そして本人は数えていないが、十台目のポットを蹴りつけたときだった。
―――…ゴポン…
蹴りどころが悪かったのか、ポッドの中に妙なものが次々と入っていく。それには見覚えがあった。
「…パパムパのぬいぐるみの中身…」
気色悪い、とポッドのガラス部分を軽く叩く。しかし
―――ピシ
直子は自分の怪力を計算に入れ忘れた。その結果ポッドには罅が入り、ぬいぐるみの中身はガラスを割って這い出してきた。まるでゾンビだ。
「ギャー、来るな納豆人間!!」
何か違うぞ、とツッコむ者はいない。周りに人がいないからではなく、彼女の周辺人物がボケばかりだからだ。それはともかく、流石の直子もぬいぐるみの中身に追われて逃げ出した。地下施設の奥へと走り出す。
「ホントに何なんだよ!?」
直子は走った。とにかく走った。何故に私が納豆人間から逃げにゃならんのだと思いながら走った。その間にも何故かポッドは割れる。ぬいぐるみの中身が這い出る。ゾンビモドキは増える。久々の恐怖の中、直子は走り、終に一際大きなポッドの前に辿り着く。
「こ、これは…!!」
その中には、巨大なパパムパが眠っていた。
「な、何でパパムパが!?」
思わず後退する。そこへ聞き慣れた声が響いた。
「…見てしまったのね、直ちゃん」
「桜!?」
弥生はぬいぐるみの中身を引き連れて、直子のすぐ後ろにいた。
「ごめんね、目撃者は消さなきゃいけないの」
弥生の指示で迫り来るぬいぐるみの中身の群れ。
「う、うわーーーー!!!」
ゾンビモドキの波に呑まれ、直子の意識は闇に沈んだ。
五十嵐直子は困惑していた。最近どうも一般的な日常からかけ離れているとはいえ、目の前の現実は今までの非常識を凌駕している。何せ漫画や映画などにありそうな地下施設にいるのだから。
今日は友人の桜弥生の家に遊びに来ていた。茶を淹れると席を立った弥生を待つ間、パパムパで遊んでいた。ところがパパムパが壁にあった謎のスイッチを
『ポチッとな』
とやってしまったのである。何てベタなことを、とツッコむ前に椅子がガコン、と音を立て、気付けばこの場所にいた。
「ったく、どうなってんだよ」
辺りを見回しても、出口らしきものはない。あるのは床を這う無数のケーブルと人間でも入れる大きさのポッド、そして少ないが照明のランプだけだ。
「そういえばパパムパもいねぇな」
しかしそれはどうでも良い。どうせいても騒ぐかボケるかで邪魔になるうえに、戦力にはならない。むしろいない方が良いか、と直子は再び周りを見回した。そしてしばらくはどうしようかと考えていたのだが、直子は気が長くない。
「ここから出しやがれ!!」
手近なポッドを片っ端から蹴り出した。責任者でも出てくればココから出られると踏んだのである。最悪の場合は脅してでも、と凶悪なことを考えながら。
「オラッ!」
そして本人は数えていないが、十台目のポットを蹴りつけたときだった。
―――…ゴポン…
蹴りどころが悪かったのか、ポッドの中に妙なものが次々と入っていく。それには見覚えがあった。
「…パパムパのぬいぐるみの中身…」
気色悪い、とポッドのガラス部分を軽く叩く。しかし
―――ピシ
直子は自分の怪力を計算に入れ忘れた。その結果ポッドには罅が入り、ぬいぐるみの中身はガラスを割って這い出してきた。まるでゾンビだ。
「ギャー、来るな納豆人間!!」
何か違うぞ、とツッコむ者はいない。周りに人がいないからではなく、彼女の周辺人物がボケばかりだからだ。それはともかく、流石の直子もぬいぐるみの中身に追われて逃げ出した。地下施設の奥へと走り出す。
「ホントに何なんだよ!?」
直子は走った。とにかく走った。何故に私が納豆人間から逃げにゃならんのだと思いながら走った。その間にも何故かポッドは割れる。ぬいぐるみの中身が這い出る。ゾンビモドキは増える。久々の恐怖の中、直子は走り、終に一際大きなポッドの前に辿り着く。
「こ、これは…!!」
その中には、巨大なパパムパが眠っていた。
「な、何でパパムパが!?」
思わず後退する。そこへ聞き慣れた声が響いた。
「…見てしまったのね、直ちゃん」
「桜!?」
弥生はぬいぐるみの中身を引き連れて、直子のすぐ後ろにいた。
「ごめんね、目撃者は消さなきゃいけないの」
弥生の指示で迫り来るぬいぐるみの中身の群れ。
「う、うわーーーー!!!」
ゾンビモドキの波に呑まれ、直子の意識は闇に沈んだ。