赤と白のうららかな
道具は用途に特化している物がいい、とサドは思う。
「あっははははははは!!ねえいたいいたい?ねえねえ?」
使い勝手がいいと尚良い。正しい道具を正しい位置に、その配置で一番スムーズに運ぶように。
「ゲキカラ」
声をかけると黒い髪を一つにまとめた美少女が、真っ赤な腕と口で振り返る。
「もういい」
出来れば正しくコミュニケートも運ぶともっと良いのに、と思いながら踵を返す。狂気の少女がサドの後ろを追いかける。
「ちゃんとできたよお、ちゃあんと、ねえ」
「はいはい、あーこんな真っ赤にして」
外の水道で血塗れのゲキカラを洗ってやる。返り血で大変な事になっている頬を、首を、腕を、水をかけて撫でるようにしてやると珠のような白い肌が覗く。
「少女の生き血を浴びると若さを保てるとかそういうの、信じます?」
「うるせえよ、手出すと噛まれるぞ」
水を浴びてきらきらするゲキカラに、ネズミが手を延ばすのを制しておく。基本的に何の躊躇も容赦もなく噛み付くサドのかわいい道具に、賢いネズミはささっと三歩ほど下がって遠巻きに見るだけだ。
「だれ、おともだち?」
「みたいなもんだな」
サドが答えるとゲキカラはうふふー、と白痴のように笑む。
「……正気じゃないし」
「ああ、そうだな」
ネズミに答える、サドの口の端に気付かぬ笑みが浮かんだ。
おしまい