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散々馬鹿にした恋の味は如何ですか?

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「へー?帝人君って、好きな人いるんだ?」

 どうしてこの人とこんな話をしているんだろうと思いながら、「この年頃じゃあ、別に珍しくもないでしょう」と返した。折原臨也と、コイバナ。似合わないというか、そもそも次元が違っていて彼の口からそんな可愛らしい話題が飛び出てくること自体が非日常的だったので、ついついその話に食いついてしまった。あわよくば臨也の好きな人とか、好みのタイプとか、面白そうな情報を零してくれるかなという期待もあって、自然と饒舌になっていたようだ。

「どのくらい好きなの?その人のこと」

 彼のポーカーフェイスを見破れるわけもないが、何となく、彼のその物言いと表情が珍しかった。堅いような、強ばっているような、口元は笑っているのに目が冷めているような。だが、すべて気のせいかもしれない。
 どうしてそんなこと聞くんですか?ただの好奇心だよ。あっそうですか。(情報屋って暇なのかな……?と思わずにはいられなかった)
 他に話題もないので、仕方なくコイバナに花を咲かせてみることにした。

「そうですね……、最初はただ単純に、その人と一緒にいると楽しいなとか、会って話す機会がもっと増えればいいのにとか思うだけだったんですが、だんだんそれが恋だと気づくと、次は手を繋いで歩いてみたいとか、キスしたいとか、そういうことを思うようになってきたくらいには、好きですよ」
「ふーん…?でもさ、それって本当に恋なの?」
「どういう意味ですか」
「そのままの意味だ。それは本当に恋なのか、愛なのかってことだよ。独占欲とか支配欲とか征服欲とか性欲とか執着心とかの区別もできないで、それらを全部ひっくるめて愛だの恋だのお綺麗な言葉で飾り立てて、独りよがりな自己満足に浸ってるだけじゃないの?」

 随分と悪意のこもっていそうな言葉だった。
 そして続けざまに、(聞いてもいないのに、)彼の恋愛価値観やら理論を長々延々と聞かされるはめになった。時間にして20分。その時の僕はキッチンでカレー作りに勤しんでいたため9割方の話を聞き流しておいたが、簡単に彼の話を要約すると、「君の気持ちなんて、どうせ性欲とか執着心とかそういった感情を愛とか恋と勘違いしているだけだろう」ってところだ。臨也らしくない、ふざけた論理だった。(でも彼は大抵常にふざけているような人なのでそれで通常運転だったのかもしれない)
 よく分からない人だ。

「愛だの恋だのそういうものが、本当にお綺麗なものだと思ってるんですか?可愛いですね。発想が」

 よく分からないが、馬鹿にされたような気がしたので、努めて何食わぬ顔で言い返してみた。
 鍋に牛肉を入れながら、言うべき言葉を推敲する。(ちなみにこの牛肉の資金は臨也さん出資だ。いきなり人のうちに押しかけて、「俺いま、すっごくすっごく手料理が食べたい気分なんだ。ってわけだから、帝人君。作って」と言われた。「生憎冷蔵庫の中には調理できるような食材なんて皆無ですよ」と返せば、「材料費は出してあげるから買ってくればいいじゃない」と有無をいわさず家を追い出された。僕の家なのに)
 暑い中カレーの材料を買いに行かされた時の理不尽さが蘇って、意趣返しの意味も込めて、言葉を返す。「少し話は長くなってしまうんですが、まあ聞き流してください」と前置きをした。

「そもそも独占欲とか支配欲とか征服欲とか性欲とか執着心を全て厳密に区別できるって信じてるあたりからして、可愛いです。愛や恋をどうやって定義するかなんて、人それぞれで、それを恋人でも家族でも友人でもない全くの他人であるあなたに否定される謂れはない。似非心理学者を気取りたいのなら、他所でやってくれませんか。笑っちゃうような心理分析や言葉遊びを聞かされる僕の身にもなって下さいよ。『あなたの言う通り、愛や恋なんて、自分勝手で自己満足なだけの欲求の結果です。あなたの言葉に感銘を受けました』とでも言ってあげれば満足ですか?あなたは恋に溺れる僕を馬鹿にしたかったんだろうけど、あなたの方こそ、恋に恋するお年頃のようで。可愛いですよ」

 喋りすぎたのか喉が乾いたので、一旦グラスの水を煽る。
 ちらりと彼を見遣れば、不満そうな顔をして佇んでいた。言い返した内容がつまらなすぎたのかな。(いつもは僕が何事か言い返すと、臨也さんは面白そうに笑ってくれるのに)
 今回の回答は気に入ってもらえなかったらしい。(どーでもいいけど)

「……………………。そうやって、自分は愛情も恋情も知ってますーみたいな傲慢な物言いで、恋を知らない俺を哀れむのはやめてくれないかな。哀れむのは勝手だけど、自分の方が人生経験豊富ですって優位を示そうとするその態度が気に入らないんだ」
「優位を示そうとしてるって感じたのなら、それはあなたが僕に対して自分の劣位を感じちゃっただけでしょう。それに事実、あなたより僕の方が愛情も恋情も知っている。経験豊富だとは言いませんが、恋愛経験がゼロのあなたより僕の方が経験値上なのは当然でしょう。何ムキになって対抗意識燃やしているんですか」
「はは。何だか今日は帝人君、いつもより言葉数が多いね。ムキになって対抗意識を燃やしているのはどっちかな?」
「さあ。どっちでもいいです。どーでもいいので」











「それよりカレーが出来たのでお皿用意してください」
「えー。面倒くさい」
「働かざるもの、食うべからずって言葉御存知ですか?」
「カレーの材料費を提供してあげたのは誰だと思ってる?」
「でもそのカレーを調理したのは僕です。そしてこの暑い中、わざわざ遠くのスーパーまで買い物に行かされたのも僕です。1回費用を提供しただけのあなたと、2回も労働力を提供した僕とでは、イーブンじゃないでしょう」
「俺と対等なつもりなんだ?」
「だからもう揚げ足取るのやめてくださいよ。面倒な人ですね。いいから、とっとと準備してくださいよ。スプーンはそこの引き出しにしまってあります」
「分かったよ。しょうがないな」










「いただきます」
「召し上がれ」

「ところで君の、その好きな人って誰?」
「聞いてどうするんですか?」
「ちょっと抹殺してこようかなって思っただけだよ。社会的に。君にそこまで愛される奴の顔を拝んでみたいってこともある」
「じゃあ鏡でも見てきたらどうですか?僕の好きな人は今、僕の目の前でカレーを頬張ってるその人なので」

「………………………っは。はは、……そんな、都合の良い嘘に、騙されない、よ」
「信じないなら、別にそれでいいです」





「どーでもいいので」